第57回 中部建築賞 入選・入賞 作品選評

審査総評
 本年度審査員長を務めさせていただくことになった。応募は一般部門Aに19点、一般部門Bに35点、住宅部門に33点、総計87点の応募があった。一次審査はオンライン形式により行った。全審査員に所感を述べていただき、投票の上現地審査候補を選出した。現地審査は2人以上で伺い、最終審査会ではその報告を元に議論を行った。最終的に入賞5点、入選15点を選んだ。現地審査にご協力頂いた建築主、施工者、運営委員ほか関係者のみなさまにこの場をお借りして感謝申し上げたい。
 今回改めて感じたのは、建築の多面性である。いうまでもなく議論は構造、環境、素材、テーマ、社会、使い方、など多岐に渡った。そもそもの切り口が多様なのであり、また審査員の視点によっても見え方が全く異なってくる。誰かがよい、と考えた点が他の審査員にとってはよくない評価に結びついたりさえする。また一次審査資料と現地審査では当然のことながら印象が全く異なる場合も多く、最終審査の過程はいかに建築が複雑で無数の読解が可能であるかを示したと思う。それは建築そのものが内包する複雑性、多面性のみならず、これを取り巻く社会の価値観の複雑性、多面性を示すものだ。あらゆる文化的・社会的な文脈の結節点に建築はあるのであり、また結びつけてもいるのだという当たり前のことに向き合うとき、建築主、設計者、施工者には今後常にその価値観の幅とゆらぎに晒され続けねばならないという覚悟が要るだろう。したがって、当面の「正しさ」に依拠するプレゼンテーションはひとつの戦略ではあるものの、その氾濫はある種の時代的凡庸さにも映る。一方で繰り返される理想的な「正しさ」こそがよりよい時代を作ってもいく。そんなゆらぎのなかにあって、多面的な価値観にさらされ、それでも耐えていく、その覚悟の切実さが果たしてどこまであるのか、僕は今後も見ていきたいと思っている。
(西澤 徹夫)

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