連環の家

岐阜県各務原市
 この住宅は、建物とくらし、建築家と施主が近づいたり離れたりしながら時が流れていると感じる。
 この住宅の特徴である印象的な仮設足場は、必然から組み立てられている。解体予定だった旧母屋を東屋として残すため、外壁を外した時に判明した軸組の腐朽した柱などを構造的に補強する必要があったため、仮設材を使用したところから始まっている。敷地には、東屋に減築した母屋、既存の離れ、新築建物の3棟が存在している。これら3棟をつなぐ役割として、この仮設足場が使われている。
 新築建物は、内部に間仕切りがなく、正方形平面の対角線で分けた北側の半分を階層によって分けており、大きな1つの箱としてつくられている。2階に風呂が設けられているが、ここも簡易な間仕切りで囲われているだけである。内部空間の梁の現しによって得られる空間の変化は、見どころである。一方で内部空間を明るくしているガラスの大きな開口部は、昨今の夏季の高温化や、日射の強さに対する配慮を、建築側で上手く処理していくことが望まれる。
 この建築では施主の役割が重要となっており、暮らしを施主自身が自分たちで手を入れて作り上げている。東屋も同様で、がらんどうな空間に、施主がCBを敷き詰め、屋外での暮らしの場として整備を進めている。
 新築建物を含め、この建築では、建物と生活、建築家と施主が建物を変化させながら暮らしを現在進行形で変化しているところが魅力である。引き続き建築家がうまく関わり、良質な建築として展開していくことに期待したい。 (櫻木 耕史)
 この地域は多棟で構成された2~3世帯住居が多く、一世代前の農家住宅の形式が残っている。もともと農家における多世帯同居、近居は、繁忙期の労働力の確保や農業技術の継承、高齢者介護や子育てなど、家族間で支え合うためにとられた形式だと考えられる。都市部を離れれば、広く地域に見受けられる光景である。
 敷地には小ぶりな母屋と離れが残っていた。通常はそれらを解体して新築することになるが、この計画では、この地域の農家住宅の形式を抽出し、今日的な解釈により再編が試みられている。
 古い母屋は、壁を取り払い、屋根と軸組だけを残した東屋に、現状のまま使える離れは個室として、その二棟の間に新しい母屋を新築し、それぞれが役割を補う暮らしを提案している。
 文化の日の休日に現地を訪れた。東屋の土間は、綺麗なシートが敷かれ、子どもたちの遊び場になっている。残された基礎や木の架構、楔式の足場は、子どもたちの遊び心を刺激しているようだ。またご家族でアウトドアライフを楽しまれている様子も見受けられた。
  新たにつくられた母屋の床面積は61㎡にとどまる。一辺6mの正方形のプランで、2階の半分は吹抜けとなっている。1階、2階共に対角線で分割され、南に位置する二つの離れに向いて開かれている。ここではキッチンや浴室も仮設的な扱いになっている。
 空間の使い方は一時的なもの。骨格をしっかりさせて、使われ方は時に応じて容易に変えられれば良いという考えが貫かれている。日常は仮の姿であり永遠ではない。日常が曖昧に感じられる今日、住むということの原初が見え隠れしている。景観保全でもありながら、住宅のあり方を問いかける作品でもある。 (森 哲哉)
主要用途 一戸建ての住宅
構  造
木造
階  数 地上2階
敷地面積
318.23 ㎡
建築面積
110.52 ㎡
延床面積
125.68 ㎡
設計者 飛騨五木株式会社 5boc architectS
施工者 株式会社井上工務店

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