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CLTの採用は与条件であったとのことだが、オフィスと社員寮・子ども食堂という異なる機能とサイズに対して同じ手法で空間経験に一定の連続性をもたせている。そのアイデアの白眉は、それなりに大判になるCLTパネルを必要壁量を確保したまま二枚をずらして配置することで、見通しのよい空間をつくるというものであった。そして意匠のアイデアではなく構造のアイデアであるところの二枚壁が、空間に微妙な歪みを生じさせ、視線の溜めと抜けとリズムを作り出している。しかしそうだとすると惜しいのは、冷徹なまでに合理的な二枚の壁の厚みが、ずれによって生み出すクランクの部分(オフィスはゼロタッチ、ハウスは溝形鋼分離れている)でちょうどよい人間的寸法になっているのに、働く・住むひとにとってのふるまいを喚起するような現れになっていないところである。構造体のまま放り出されずに、ちょうど半身程度のここの寸法が座ったり隠れたりものを置きたくなったり、といった活き活きとした風景を生み出せていれば、この構造的なアイデアは人間の豊かな経験に回収されるような強度を持つことになっただろうと思わせる。一方、室の配置計画によって空調・非空調領域を組み合わせてエネルギー消費量を抑える方法は、シンプルながら今日的な課題に対する汎用性の高い解答となっており、CLT採用と合わせて学ぶ点の多いプロジェクトである。
(西澤 徹夫)
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建築の構造設計に携わってきた経歴を持つ社長から、CLTを採用することが条件とされたことから、CLT探求の設計プロセスが始まった。構造設計者と時間をかけCLTの特性を活かす構法が検討・検証され、施工者は見事にその実現に応えて、木質感豊かな建築となった。ビル建築での木造架構では、大断面が支配的になりがちだが、2枚のCLT版をずらして重ねた面柱にして、鉄骨材とのハイブリッドで、軽やかな構造フレームとなり、オフィス棟では鉄骨梁下に組まれたCLT小梁が、このオフィスを特徴づけるように空間に伸びやかな秩序リズムを与えている。構法によって床下にできる空間はそのままダクトレスな空調スペースとなり、居住域での温熱環境づくりに寄与している。非空調と空調エリアの明確な区分による無駄のない空調ゾーニングの考え方により、快適なワークスペースのための空気の流れをつくり出せているか、猛暑期や厳冬期に再訪して、体感してみたいところである。
ハウス棟では2枚のCLT版を溝型鋼でジョイントして同じくずらして重ねた面柱をつくり、CLT床版で無駄のない架構をつくっている。住居スケールと平面形に応じた耐震要素となるCLTの補助壁の配置も破綻のないきれいな納まりで、木質空間の温かみが存分に体現されている。社員寮(独身者)の計画に、地域への社会貢献を図る『子ども食堂』を組み込んでの運用が、これからスタートするなかで、どのように展開されていくか、おもしろい試みである。
建物を構成する素材の質感、その魅力を引き出し、観るだけで眼を愉しませてくれるこの建築の意義が、街ゆく多くのひとに共有されることを願いたい。経年変化を受けながら、どんな本質が表に現れてくるか、それこそ粋な『然び』を感じ取れる場になって、時・空に奥行きを与えてくれる存在になって欲しい。
(山本 和典)
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