「くらすわの森」建設プロジェクト

長野県駒ケ根市赤穗16421-1他
「くらすわの森」建設プロジェクトは、長野県駒ヶ根市、中央アルプス東麓の北部に広がる里山において進められた試みである。ルイジアナ美術館を参照したという森の中をめぐる環状の空間は、それに接続する建築群とともに、外部環境や樹木が溶け込むような空間の質を備えている。求心的な移動とともに視界が多種の樹木へ展開し、森の光や影が建築に浸透していくようである。設計にあたっては地盤面測量とBIMモデル技術によって既存の自然環境を詳細に記録し、一本ごとの樹木が精密に測量された。その結果、高低差8.7メートルの地形と既存樹木を環境として受容し、建築が地貌と共存するかたちを可能にしている。また、移築された木造建築が新たな構成に組み込まれ、全体が集落のように連なっている。本計画は森林再生と持続可能な環境整備を掲げているが、その本質は地域資源の創造にある。1992年のリオサミット以降、「サステナブル」は理念として定着してきた。しかし、その理念の源泉にあるのは社会的・経済的な「持続可能な開発」であり、建築が目指すべきは持続可能性や、環境に順応するだけではなく、環境を媒介として新たな関係性を創出することであろう。建築が存在することで環境そのものが変様し、再び生命的循環を取り戻す。それは「リジェネラティブ-Regenerative」、すなわち「地域資源再生」の概念に基づく建築思想と言っていい。
 「くらすわの森」は、その思想を備えた建築のひとつである。森の一部として静かに在りながら、環境を観察し、再編成し、そして再生へと導く。建築そのものが思考し、環境を更新する存在として立ち現れている。サステナブルを超えて、建築が環境と共に思考し存在する姿を示している。 (金子 尚志)
 それぞれの環境の中にどう建築をするか、その解決を期待するものです。応募作品は、19万㎡の広大な敷地に、養命酒の工場があり、その一角に4つの施設や屋外歩道が整備されている。それぞれの施設は、ちがったデザインコンセプトで形成され、創立100年の記念プロジェクトは、人と森がテーマとなっている。もっとも感心したのは、壱の蔵(以前中部建築賞)が入口となり、フォレストリングという回廊に、3つの商業施設が、配置されて、中央部分は既存の木々や植樹された森が、ガラス越しに広がる、ユニークな設計となっている。屋根は直径が80mあり、高低差も8.7mあり、中心に向かって傾いている。またスロープは1/15勾配となっていて、リングを廻ると、それぞれちがった風景がみえるのも、たのしい。社内に樹木医がいてメンテナンスも継続的に行なわれている。緑の空間が心を癒します。
 全体において、土地の造成を最小にして、レーザ-ドローンやデジタル測量を駆使して、環境をこわさない工夫が、好感をもてる。内部は鉄骨の表しとなっているが、柱梁の接合部はノンブラケットで現場溶接され、すっきりしたディテールとなっている。
 養命酒は中川村が発祥で、400年を継過して、そこにあった壱の蔵が2回移築、弐の蔵は3回移築をくりかえして、駒ヶ根の工場で再度同じ敷地に建つこととなった。弐の蔵は、レストランとして改装されていて、古い木造のすばらしさとハイセンスの厨房、レストランの新旧は心地よい。小屋組みが表しになっている。レストランの用途のためスプリンプラーが完備されている。壱の蔵と弐の蔵は大変似ているわけです。
 古い建築物と新しい建築物が共存するこの作品は味わい深いものがあり、観光客も一日1000人以上とのことで、賑わいも 納得のいくところです。
 (場々 洋介)
主要用途 食品工場
構  造
鉄筋コンクリート造
階  数 地上1階、地下1階
敷地面積
189,745㎡
建築面積
3,550.68㎡
延床面積
3,649.1㎡
建築主 養命酒製造株式会社
設計者 株式会社ヤマウラ一級建築士事務所
株式会社丹青社
施工者 株式会社ヤマウラ

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