第56回 中部建築賞 入選・入賞 作品選評
審査総評
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本年度、審査員長を務めさせていただくことになった。本年度の応募は一般部門Aに24点、Bに34点、住宅部門に37点、総計95点の応募があった。ウェブで行った一次審査ではまず全作品に対して全員の所感を述べていただき、その上で投票を行って現地審査対象を選定した。前審査員長時代に意見の偏りがないようにと確立された原則として2人体制を踏襲し、運営委員の協力を得て現地審査を行なった。現地審査後は全員が出席した審査会にて現地審査の報告を聞きながら議論を行い、入賞9点、入選8点を選んだ。現地審査にご協力いただいた建築主、施工者など関係者の方々に感謝いたします。
私は東京に拠点を置いて設計と教育の活動を行っているもので、中部地域には旅行や建築見学で訪問するぐらいの知識しかない。今回、審査に参加するにあたって、中部地域ならでは、地方都市ならではの作品に出会えることを楽しみに審査させていただいた。結果として中規模のB部門、住宅部門にそのようなものが多く、地域特有の課題を、建主や工務店と共有しながら丁寧に企画・設計・施工されていることが印象に残った。審査会では設計事務所の名前を伏せて行われたが、結果として、中部地域に拠点を置く設計事務所の作品をいくつか選定していた。地域の建築文化の育成と醸成にあるはずの、地域限定の建築賞の役割をいくぶんか果たせたとわかり、ほっと胸を撫で下ろしている。
しかし、こうした竣工作品の審査は本当に難しい。多様なバックグラウンドをもつ審査員それぞれの視点から急所をつく疑義はいくらでもリストアップすることはできるだろう。審査会でもそうした場面があったし、私個人としても表彰される対象に対して疑問がゼロということではない。今回は、募集目的にある「持続可能な社会」の要請に対する回答として一定程度の水準に達していると審査員全員で判断を行ったわけだが、将来的には規模で部門を分けることから脱して、「持続可能性」の追求の方向性によって部門を分けるということもあるのかもしれない。例えば、まちづくりに寄与する部門などが考えられるのではないか。
最後に、審査への参加は今年いっぱいになる。たった一年で交代することに対してお詫びを申し上げるとともに、このような機会を与えていただいたことに感謝いたします。
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(乾 久美子) |
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