森の端オフィス岐阜県飛騨市古川町高野字稲葉通287-1 |
飛騨高山に拠点をおき、広葉樹利用の促進をとおして持続可能な社会をつくることをミッションとする通称「ヒダクマ」と呼ばれる第三セクターの拠点のひとつである。 最初の拠地は飛騨古川の市街地にあるが、既存の広葉樹の製材所に隣接する敷地に第二の拠点として本建物が建設された。そのため、外皮である金属波板をはじめとする多少の部材以外のほとんどは広葉樹で構成されている。もっとも目を引くのは、屋根の架構だろう。皆伐するのではなく、間伐によって必要分のみを伐採し、林道ではなく架線によって運搬する。こうした持続可能な林業を目指すための実践を重視するため、材は短いものしか手に入らない。 また、とれた広葉樹を使うということを前提とするため、材種があらかじめ決まらない。設計は、そうした条件の難しさと面白さを十分に掴み取った上で進められた様子が見てとれるものとなっていた。特に、スライスした材を交互に組み合わせながらトラスを組んでいくという判断は、広葉樹らしいややねじれた丸太の形を生かしながらも、木材の存在が大きくなりすぎることを緩和しており秀逸なデザインとエンジニアリングであった。 また、多様な材種を多様な方法論で使い切ることなど、広葉樹の普及のための要素が散りばめられており、施主、設計者、施工者が楽しみながら広葉樹の可能性を切り開いていった様子に清々しさを感じた。 持続可能な日常を目指し、材料の調達から突き詰めた建築である。 (乾 久美子) |
広葉樹を専門に扱う製材所のオフィスである。細い木や曲がった材も含めて、種分けして100%利活用するシステムのモデルとして体現される建築である。 力強い三角形のトラス構造が印象的である。2mの積雪量があるため、積雪を流すための三角形であり、積雪荷重に対して合理的に部材を配置した結果でもある。 積雪の多い飛騨の広葉樹は曲がり木が多く、長尺物が確保できないという。そこで短い部材を組み合わせたトラス構造が採用された。厚さ30mm~40mmの不ぞろいの板材が合わせ梁を構成し連続する内部空間は威圧感はなく、逆にゆったりした空間を感じさせる。広葉樹利活用のショールームとしての役割も果たしており、またコンサートなどイベントにも使える空間となっている。 床が5段に変化していることも空間の広がりを感じさせてくれる。しかも床フローリングがフロアごとに異なる材料で仕上げられている。トチ、クリ、ホオ、ブナ、サクラ、のフローリングはまさにショールームであるとともに、暖かな床仕上げとなっている。 さまざまな樹種が混ざり、目に映る森の木で建てられていることで、森のにぎやかな環境を体現しているといえる。森の端に、かつ街の端に建つ鋭角のかたちの建築が、周辺の工場や小屋の風景となじんで佇んでいる。 (塩見 寛) |
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