カムカムスワロー岐阜県岐阜市早田大通2-8-1 |
病院が地域コミュニティと繋がる1つの道筋を示してくれました。口腔外科の医師が発想したひとが生きる上で必要な「食べる・噛む・呑み込む(嚥下)」の基本行為への機能障害・欠落は、病気や機能不全につながり、本人や家族の心身面での大きな負担になる。困りごとを抱える人を孤立させないで、「緩やかに、おおらかにみんなで助け合って行こうよ」と呼びかけている建築や医療サービスになっていると強く感じた。 地域の困りごとを知り、みんなでそこにどんな支援が必要なのか学び、理解して、支援を提供できるプレイヤーが集まり、一緒に行動できる拠点が必要であった。これに応える拠り所を近石病院が提供できたことで、疾病予防や生活習慣改善など、医療が目指す本来の目的に、一番応えられるBASEができあがったように思う。 国が推進する地域包括ケアのあり方には、正解がなく、地域ごとの実践が叫ばれているけれども、地域の在有資源(施設・ひと・サービス)をうまく活用して、住み続けられる仕組みや環境づくりは、実現が難しい。カムカムスワローが打ち立てたプログラムとそのための場づくりは、まさに地域包括ケアを見事に実践でき、発展させられる実践的な事業になる可能性を秘めている。 とかく医療・介護・福祉施設は、収入に結びつく法制度の診療報酬点数の獲得に直結するように、施設基準を満たす環境整備を優先させて、運営上の基盤をつくってきた。まだ報酬点数の該当項目にも当たらないカムカムスワローの運営プログラムが、病気にならないで、健康でいられるための地域の「健院」として、その意義と価値を実証できたら、逆方向から診療報酬の改定を促す先駆的な「医療・介護・福祉」連携のモデルとなり得る。 カムカムスワローの「支え・支えられる」者同士の結びつきを象徴するLVL材によるホール部の屋根架構は、みんなで力を出し合えば、軽々と持ち上がり、みんな一人一人が主役になって、生きられることを見事に象徴する建築空間になっている。 (山本 和典) |
当初、カウンセリングスペースと薬局で始まったプログラムから、嚥下障害を持つ人も食事を一緒に楽しめるカフェや、通院や退院した人がお茶を楽しみながら気軽に立ち寄れるカウンセリングスペースと薬局に改良されたのは、設計の「まえ」「うしろ」に関わることで、活き活きとした建物を作り出している設計者の手腕によるものであろう。 角地の敷地に対し、角にカフェの飲食スペースである「みんなのホール」を設け、接道側は両側とも6枚建ての引き戸とすることで、引き戸を開放すれば、周縁のテラス席と一体的な利用が可能となり、街に対して開放的な構えになっている。 内部は3mグリッドに鉄骨柱が規則正しく建ち並び、隣地側には、キッチンや相談室、水回りなどが機能的に配されている。屋根はLVLによるレシプロカル構造を採用しており、互いの部材が支え合うように組み合わされている。一見、天井の装飾のようにも見える架構は「みんなのホール」の象徴となり、人々を引き寄せ、交流させることにも一役買っているようだ。簡素な素材で作りすぎないように配慮されたインテリアは、利用者たちの様々な要望を受け入れながら、今後も変容していくであろう。 医療の繋がりと地域の繋がりを上手く組み合わせて、新たなコミュニティスペースを作り出した本施設が、成功事例となり、各地に広がってほしいと思わせるような、先進的な取り組みであった。 (横山 天心) |
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