岐阜県庁舎岐阜県岐阜市藪田南2-1-1 |
タイル・木材・和紙・石などの地場産の素材を使い、岐阜の県産技術を結集させて、豊かな自然と伝統文化に彩られた岐阜の魅力を発信する県庁舎として、高層の行政棟は、安心・安全な耐震性の高い建物にして、ライフサイクルコストを低減させて、自然エネルギーを有効に取り込んだ温熱環境へのシステムづくり(窓廻りの中間期換気・執務フロアのエコボイド)などに配慮して、旧庁舎に負けない長寿命化を目指す建築づくりが図られた。 旧庁舎の空間を多彩に演出していたアートワーク(ステンドグラスや陶板等)が、新庁舎に受け継がれ、新設された工芸技術やアートと共に時間の重みが対比・複合されて、建築に「品格のある 場につながる力」が与えられた。 20階には、岐阜の景観を360度見渡せる展望空間「清流ロビー」が配置されて、訪れる人に絶景を提供している。足元から天井まで全面ガラスの開口部の先に、内装の床タイルが連続するように伸びてバルコニーテラス(耐候性の高い塗装で描かれたタイル模様の床)を張り出したことで、恐怖感を感じない窓辺となって、眺望を楽しめる仕掛けになっている。 低層部の3層階を一般開放して、様々なイベントに対応できる展示スペースとして設定されているが、日常的な憩い空間としては、しつらいが少なく、ひとを呼び込み寛がせるための雰囲気が感じられない。県産材の家具や調度で居心地のよい県民サロンやラウンジなどへと発展していくことを期待したい。その内装空間では、県産材の木材が縦格子状に多用されているが、直線的で機械的な配列は、表情が硬く、柔和さに欠けた印象を受けた。(光により表情が変化する仕掛けかもしれない) 約束事の多い庁舎建築に長けた熟練の設計者による手堅い設計手法で、維持管理が容易な建築を具現化させながら、素材・工法・納まりの見え方に、独自の審美感を仕込ませて、建築を美しく見せることへの熱量(想い)の深さは、現地で空間を語る自信に満ちた言葉の中にも感じられた。 (山本 和典) |
行政棟の1階~3階と最上階、議会棟の1階エントランスなど、県民が立ち寄れるスペースには岐阜の地場の素材や技術をふんだんに取り入れている。行政棟の1階~3階には、大きな吹き抜け空間や東西に広がるロビー空間があり、それらの壁面が檜の繊細な縦ルーバーで覆われることで、県民を誘い、迎え入れるような空間となっている。 また、この建物は1階柱頭免振を採用しているが、その存在を感じさせないように、免振クリアランスと免振点検パネルが巧みに納められており、設計者が「世界一美しい柱頭免振の建物」と自負するのも納得である。最上階には、岐阜の風景を楽しめる展望ロビーが設けられ、CLTを用いたカーテンウォールにより、アイレベルの視線を極力遮らない工夫がなされている。 議会棟の1階エントランスには、清流の揺らぎやきらめきをイメージした大壁面、落水をイメージした6層吹き抜けのエレベーターホールの壁面など、地場のタイルの魅力が余すところなく表現されている。このように岐阜の魅力が詰まった一般開放エリアではあるが、県民が佇むような場が積極的に設けられておらず、審査時も県民の姿をほとんど見ることできなかったのは残念である。また、行政エリアと一般開放エリアがレベルで完全に分断され、来庁者と県庁職員の交流が各階のエレベーターホール前の打ち合わせ室で行われるなど、セキュリティを重視した行政側の要望を具現化したものであるかもしれないが、このようなドライで潔癖な解決策に、県民に開かれた県庁の在り方として物足りなさを感じた。 (横山 天心) |
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