ヤマニパッケージ社屋

岐阜県岐阜市清本町2-44
 パッケージの企画を通じて商品開発との結びつきをつくる企業の新社屋は、創業地エリアに確保できた角地の特性を生かして、在来種の雑木林をイメージして地域に親しまれる緑の庭の提供を図りながら、オフィスの機能がパッケージされた自社建築を創出させた。
 シルバーのアルミパネルの外観は、建物と植生との位置関係に応じて、その表面仕上げ(マット/艶消し度合い)を使い分けて、植生を映し込む微細な表情づくりに寄与している。
 来館者は、商談のベースとなる既存のパッケージデザインを観賞できるギャラリーを横目に、前面に広がる庭を愉しみながら、玄関へと導かれる。ガラス越しに通景される前庭と共に、3層吹抜けのアトリウムの中心には、室内での生育に配慮して選定された耐陰性の植生を組み合わせて、「緑陰の島」をつくり、エントランスでの緑視率を高めている。
 オフィスの執務機能は、2階に集約させて、社員の満足度につながるバイオフィリックなワークスペースが、随所に展開され、自主性の高いオフィス・ランドスケープが出来上がっている。2階への外からの視線は、開口部の構成、植生と目隠しパネルを組み合わせたスクリーン制御により巧みに守られている。
 3階は、チーム会議にも活用できる食堂や全社員が集結できる講堂(多目的スペース)が、ON/OFF切り換わるリフレッシュ空間となり、視線が抜ける気持ち良いスタッフサロンになっている。
 1階のギャラリーを除くエリアでは、上下足の履き替えが機能して、オフィス内部は清潔度が増し、アットホームな感覚で、居心地の良さを高めている。
 建築における材料選択、施工精度もパッケージ企画を図る企業イメージを体現するように上質で緻密な納まりから、企業のものづくりへのメッセージが伝わってくる。創業100年が実現する30年後に、建物とともに、ヤマニパークの植生がどこまで成熟していることか、「未来へワクワク」を届けるヤマニパッケージの「キラリと輝く器」であり続けて欲しい。 (山本 和典)
 南側のインストリートに加え、北側、東側も接道している敷地に対して、建物ヴォリュームを西側と北側に寄せたL字型の形状とし、南東の角に大きい庭を配し、それを囲むように、ぺイブでデザインされた広場のような駐車場が設けられている。さらに駐車した車が道から目立たないよう東側と南側の敷地境界には植栽帯が設けられており、立体的で奥行きのある緑が街に対して潤いを与えている。
 建物はL字の屈曲部に大きな吹き抜けをもつ「アトリウム」設けており、1階の植栽ボックスから延びる木々を愛でるように、各階のスラブを張り出すことで各々の場を作り出し、上下階を有機的に結び付けている。
 1階はギャラリーとサンプル倉庫、2階はオフィスとデザイン室、3階はキッチンダイニングとミーティングルームが配され、1階は全面ガラス、3階は腰壁と水平連窓によって庭に開かれているが、2階はパッケージデザインの守秘義務もあることから、アルミパネルで覆われ、それらを穿つようにミーティングスペースを兼ねた出窓が設けられている。オフィスは南側に設けられたガーデンに全面開放しており、デザイン室も北側に窓が設けられているので、閉塞感は感じられず、落ち着いて執務に集中できる環境であると感じられた。また、外観では2階のアルミパネルはファサードのアクセントになるとともに、中庭の緑を映しこみ緑を増殖する効果も持たせている。もっと中庭の緑が育った時に、また訪れたいと思わせる社屋であった。 (横山 天心)
主要用途 事務所
構  造
鉄骨造
階  数 地上3階
敷地面積
2,547.72㎡
建築面積
1,507.98㎡
延床面積
3,227.08㎡
建 築 主 株式会社ヤマニパッケージ
設 計 者 株式会社ほとり建築事務所
Uo.A
施 工 者 株式会社市川工務店

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