第55回 中部建築賞 入選・入賞 作品選評

審査総評
   本年度の応募は一般部門Aに24点、Bに32点、住宅部門に33点で、合計89点であった。微減はあるもののここ3年間とほぼ同数であった。概ね20プラスαを目標に投票と議論を経て現地審査の対象として、部門Aから7点、部門Bから7点、住宅から10点で合計24点を選んだ。各作品に最低2人の審査員を割り振り、運営委員の協力を得て2ヶ月をかけてみて回った。この進め方は3年目を迎えるが、現地審査後の議論が活発になり、より説得力のある審査ができていると感じている。その後、全員が名古屋に集まって審査会を開催し現地視察の報告を交換し、その後全員での討議を経て、入賞8点、入選8点を選び、1点を特別賞とした。ご協力いただいた建築主をはじめ関係者の方々にこの場を借りて御礼を申し上げたい。
 評者は、日本の現状や環境問題の深刻さを考えると、いつまでも新築を続けることはできないと感じ、建築における改修(リノベーション)の重要性を、毎年この場を借りて強調してきた。新築は環境の全面改変であり、往々にして人々が慣れ親しんだ環境を容赦なく壊してしまう。それに対して、改修は、今あるものを生かすことが基本になる。そうなるとデザイン目標も改められる。それは、最小の手段で、機能的にも意匠的にも最大の効果を得ることでなければならない。それだけに改修の設計者には高い環境の読み取り能力とデザイン力が要求される。改修は地味であるが、日本の都市や自然のもっている美しさを継承し、可能性を引き出し、多様性を生む有力な方法である。高い水準の改修作品が生まれれば、日本の建設市場における地位も上がり、それに対応した建材や設備機器や工法も開発され、やがて建て替えではなく改修を選ぶ発注者が増えるだろう。今後、本賞がそういう役割を担えればと期待している。
(大野 秀敏)

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