金石町家つなぎプロジェクト石川県金沢市 |
築80年、延床31坪の小さな町家の素直なリニューアルである。大胆な改造や見せ場をつくるというのではない。奇を衒わないリニューアルなのである。違和感なく昔の家が建っているという風情である。断熱と耐震が徹底され、「寒さ、暗さ、狭さ」のストレスを感じさせないことに成功している。 揚屋を行わず支保工で建物全体を保持し、柱脚部分を浮かせた上で、RCのベタ基礎を施工している。その上で改修前0.10の構造評点を、耐力壁を配置し1.03まで上げている。 1階2階の建物全体を途切れることなく「まるっと」くるむように断熱している。断熱と同時に機密施工を徹底し、床・壁は断熱ボード+機密ボード留め、天井は全面機密シートを施工している。 数寄屋風だった元の住宅の造りを継承している。水回りの小庇、2階和室の欄間はそのまま生かし、こじんまりとした小さな空間がつながっている。 能登産の珪藻土をすべての居室の壁仕上げとしているが、施工にあたっては、まちの内外から20名を超える人たちの参加で、土壁塗りワークショップを開催している。 隣も裏も空き家で、壊されていく町家が多い地域の中で、リニューアルのプロセスを地域の人たちと共有していく試み、また町家改修の記録の冊子制作、さらに改修後の公開内覧会の開催など、ていねいに繕って住み継ぐ町家の価値を、地域の人たちに理解してもらうこととして評価したい。 (塩見 寛) |
金澤町家が多く残る金石地域における築80年以上経過
した町家の改修プロジェクトであり、建築家の自邸である。
建築家は土地探しからこの古い町家付きの敷地に行き着き、
温熱性能や耐震性を向上させ良質な住宅ストックとして保
全活用することで、町家改修のプロトタイプにしようと購
入を決めた。 建物は長期優良住宅の性能項目を指標に劣化対策、耐震 性、維持管理対策、省エネルギー性、バリアフリー対策の 向上を行っている。温熱計画では断熱性、蓄熱性、気密性 を向上させ、温度差による重力換気、海風等自然エネルギ ーの活用、縁側をパッシブゾーンとして活用している。耐 震診断を実施し上部構造評点1.0以上を確保しており、RC ベタ基礎に全面改修し、不同沈下対策、防湿性の向上を図 っている。床レベルを上げ床下空間を確保するなど維持管 理対策、劣化対策により耐久性を向上させている。 町家の伝統的な意匠を残す範囲を取捨選択し、コストと 性能バランスをとり、限られた予算の中で性能を大きく向 上させ、現代のライフスタイルを実現している。若い世代 が町家改修を住宅取得の選択肢にする可能性を高めたプロ ジェクトである。 地域住民を対象に珪藻土塗りワークショップを実施、町 家改修記録の冊子を制作・配布し、町家の保全活用につい て地域住民の意識向上を図っている。このプロジェクトが 町家の未来へつながり、地域活性化の一翼を担う可能性を 評価する。 (筒井 裕子) |
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