軽井沢の居場所長野県北佐久郡 |
父親が建てた家を引き継いだ子供世代が、一族で利用するために建て直した別荘建築である。父親が作った小さい木造の東家と、旧宅の2階部分を撤去した後の一階基礎部分(RC)が残され、その二つを結ぶ古い軸と直交するように新しい切妻平家の長い建物が計画された。古い軸が、新しい直線的な建物を貫通して十字形に空間が組織化されている。交差部を通り抜けの土間として、住まいへの入り口にすると同時に客室部分と母家を分けている。立地や利用形態の性格から複数家族の同時使用が多いことに対応するために、開放的で大きい切妻のなかに壁の多い小さい切妻を入れ式に挿入する構成で、それぞれの家族や来客のプライバシーと環境性能の確保をしようとしている。 新旧の構造物と変化に富んだ広い敷地の自然環境を巧みに組み合わせた設計手腕は賞賛に値する。一方で、これだけ恵まれた条件を前にすると、別の展開の可能性があったのではないかと考えさせるところもあった。 (大野 秀敏) |
一族4家族14人のための別荘である。 緩やかに傾斜する地形に追従するように、1mほどの高低差を受け止めて、4家族の居場所となる空間を分節化している。桁行方向にも梁間方向にも段差が設けられ、床の段差が空間の領域をつくっているといえる。 基礎コンクリートが段差に顔を出すことで、建築が地面や地形と接続し、4家族それぞれの居場所と皆なで使う場所とを緩やかに分節化した空間デザインは巧みだ。 南北に長い長方形の平面プランに、大きい屋根を架けて空間を包んでいる。その大きい屋根の内側に、4家族の居場所となる空間を包む小さい屋根を設けて、軽井沢の厳しい冬の環境にも対峙できる対応を提案している。これは小さい屋根の東西の両側に広縁と濡れ縁を設けて、室自体は外壁・屋根と接しないことがその解答としている 一族4家族がすでに数十年にわたり別荘生活を積み重ねているという。春夏秋冬、季節ごとに自然の中で暮らす経験を重ねてきたのだという。そしてこれからも親から子へ、子から孫へ、さらに次の世代へと継承していくことをめざしている。そうとするならば、建て替え前から存在している木造の東屋、RC造の上屋との空間のつながりを、もう少し考慮していれば、もっと居場所としての高まりが感じられたのではないか。時間の連続性が空間のデザインに演出されていないことが残念である。 (塩見 寛) |
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