射和の家三重県松阪市 |
三重県松阪市の郊外に建つ、家族4人が住む住宅兼アトリエである。熊野街道沿いの、かつては商工業の中心地として栄えた豪商の街並みが残る地域も、時と共に都市化の様相へと変わりつつあるようだ。 とはいえ、敷地は南北に細長いが住宅には充分な広さの恵まれた土地である。道路から少しセットバックしたこの住宅は、矩勾配の切妻の大屋根が周囲からは良く目立っている。大きく張り出した登り梁は軒先を低く抑え、機能的な面のみならず、この建物のプロポーションを印象づける意味をもっている。 平面構成は、玄関を兼ねた内土間を中心とした明快な間取りである。(このところの応募作品には玄関のない住宅が多い、と感じるのは私だけだろうか?)この内土間は仕事場も兼ねているようだが、大きな天窓と、大きく開いた開口部の効果もあってまるで外空間のように感じられる心地よい空間だ。視界も風通しも良く「日中はほぼ照明いらず、エアコンの出番も少ない」という。快適な空間として、食事や団欒、遊びなどおおらかな使い方が出来そうである。 その内土間を中心とした、和室、居間、外のウッドデッキと続く流れも、登り梁の大きな張り出しの効果もあって、日常の中で光、風、季節を感じられ、内外を意識させない魅力的な空間に仕上がっているが、建具の工夫によってプライバシーに配慮した静寂な空間になるようにも配慮がなされている。全体として、“内でも外でもない空間づくり”という意味では成功しているのではないだろうか? (松本 正博) |
この建物は45度勾配で軒高を抑えたシンプルな切妻屋根の下に開放的な内土間を有する平屋の住宅である。アプローチは道路に面して設けられた駐車スペースの脇を通り、東側の庭を見ながら、玄関を兼ねた開放的な内土間から住宅に入るよう計画されている。大きな木製建具を開け放つことで庭と一体的に利用できる内土間には、上部のトップライトから光が降り注ぎ、それを取り囲むように一段上がって、和室や居間や台所が設けられている。内土間に面する壁仕上げは外壁と同じ素材を用いることで、半外部らしさが演出されている。 また、内土間は設計者の事務所スペースも兼ねており、まさしく地域や社会とのインターフェイスになっている。駐車スペース側に子供部屋と主寝室を設けており、道路側の妻側はやや閉じた印象をもったが、それらの桁から上の部分は露出した登梁が連続するロフト空間になっており、内土間を介して反対側の南側のテラスや庭にまで視覚的に連続させるなど、閉塞感を感じさせない工夫がなされている。 南側には家がもう一軒建つくらいの広い庭があり、さらにその先の崖を降りて川までが敷地であることから、今後、この家を起点として、南側にどのように居住領域が広がっていくのか楽しみである。10年後に再び訪問したいと思わせてくれる住宅であった。 (横山 天心) |
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