福井の住宅福井県福井市 |
この住宅で一番に評価したいのが依頼者の姿勢にある。設計者の選定以降提案にはほとんど変更を要求せず設計者の意図を発揮できるよう対応されたという。住宅では自分たちの思いを実現したいというのが一般的だが設計者の領域には口を挟まなかったとも。おかげで設計者は構想を実現するために構造や素材の使い方など細部にわたってとことん追求できた。そのこだわりが密度の高い建築に現れている。 さらに設計者の要求に厳しい予算のなか忠実に応えた工事施工者にも敬意を表したい。質の高い建築を作るのに欠かせない条件が満たされたことでこの住宅はできたのだ。外部や内部の整理された表現からは設計者の情熱、熱い思いが伝わってくる。 内部は坂の途中の角地という敷地条件から高低差を利用し眺望満点の空間となっている。吹き抜けになったリビングの一面は全面ガラスとなっていて解放感を満喫できる。道路からは二階になっているためプライバシーは守られている。住宅街にありながらここまで開放的なケースは少ないように思われるがクライアントはこの雰囲気を気に入っている気配。 設計者は木構造のフレームの表現に大きなエネルギーをかけたという。その努力がリズミカルな空間を生み出した。 大きなガラス面の日差し対策と夜間のプライバシー保護のために外付けの電動ロールスクリーンを自らこの家のために作ってもらい取り付けられている。遮熱効果もあり有効に機能している模様である。こうした配慮もきっちりされているからクライアントの信頼も厚い。 要素を絞り込みディテールを極め作りこむ、努力を惜しまない並々ならぬ執念を感じる、 その情熱が見るものに伝わってくる。建築に情熱を傾ける若い設計者のこれからの活躍が楽しみだ。 (藤𠮷 洋司) |
半世紀前にひな壇造成された住宅地において、老朽化した擁壁を再生するために、駐車場とLDKレベルに合わせた庭を設け、その上部の手前には大きな開口部を持つ天井の高いLDKを、奥には水回りと個室空間を2層まとめてコンパクトに配置している。LDKの天井には屋根トラス架構が910㎜ピッチで露出しており、床から天井までガラス面を設けることで天井と軒裏が連続し、架構がさらに内外の連続性を強めている。 また、巨大な開口部の日差しをコントロールし、道路側からの視線を遮るために、地元の業者と協働して、特注の外部電動ロールスクリーンを設置している。果たしてここまで巨大な開口部が必要であったか疑問は残るもののLDKから見下ろす街の風景は圧巻であった。 施工者は設計者の実の兄であり、クライアントは設計者が設計した兄の住宅を見て、住宅を依頼したそうだ。限られた予算の中で、擁壁や特注のロールスクリーンに加え、設計者のこだわりのディテールを具現化するのは並大抵の苦労ではなかったと思われる。また、細かな要求を敢えて言わずに設計者を信頼したクライアントは、完成した住宅を楽しみながら住みこなしている。設計者・施工者・クライアントそれぞれの想いが結実した微笑ましい住宅であると感じた。 (横山 天心) |
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