OYAKI FARM BY IROHADO

長野県長野市篠ノ井杵淵7-1
 信州の郷土料理であるおやきを製造と販売をする企業の拠点である。場所は、長野市の中心市街地から高速道路入り口に向かう幹線道沿いで、長野市観光の帰り道に立ち寄れる絶好の場所が選ばれている。その立地を生かして、帰路を急ぐ車からの視線を受け止めるかのように、個性的なファサードで迎え打つ構えである。民家のもつ土着性を現代的に表現するために、木構造が選ばれ、太い用材をふんだんに使っている。明るく軽いインテリアに親しみ、伝統的な暗い民家を受け付けない現代日本人を惹きつけるものがあるのだろう。敷地選びから関与したという建築家は、本施設の商業的な成功に大きな貢献をしていることは間違いない。
  一方、評者は、この作品の建築計画とデザインには様々な疑問を感じた。たとえば、大きい構えの割には奥行きの浅い店舗、方杖構造とその上に載る出桁構造の庇の出自の違いや幾何学のずれ、風除室の版築による円筒形と半月型の列柱の曖昧な関係、裏側に置かれた製造部門の作業員の衛生管理のための複雑な動線構成などである。
(大野 秀敏)
 信州に根付いている「おやき」の老舗店の新工場とカフェ・直売所である。
 弥生時代の赤い土器が発見された地域でもあるから、大地から生まれ大地に還る建築をコンセプトに据えたという。いくつかの大小の「円」をデザイン構成の要素としている。それらの円の重なりが建物を特徴づけている。工場を囲む大きな円、カフェ・店舗を包むやや小さな円が外壁の輪郭を構成し、一つ屋根が弧を描きアプローチ側に緩やかに傾斜する景観構成は、信州の山並みとも共鳴し、来る人を迎え入れようとしている。
 建物部分を約1m盛り上げ、大地の隆起を想起させている。また、玄関入口の小さな円は、建設残土を利用した版築であり、大地から盛り上がった感覚を思い起こさせる。ただ、コーティングによって土の感触が希薄になってしまったことと、縦状のクラックが想定外に多く出来てしまったことは少し残念ではある。
 延床1664㎡の建築を木造2階建て在来工法で造り上げている。手刻みという人間の手による伝統技術と、プレカットの木組みという現代技術との組み合わせが、木が連続するリズム感のある外観と内部空間を形造っている。
 矩形の工場の上をほとんどテラスとし、店舗から弧を描いた階段でアプローチできる屋上外部空間としている。カフェが延長する客席でもあり、信州の自然を眺望できる空間としてイベントなど利活用の可能性を秘めた場所となっている。
(塩見 寛)
主要用途 食品加工工場・ドライブイン(直売所)
構  造
木造在来工法
階  数 地上2階
敷地面積
9,214.56㎡
建築面積
1,516.34㎡
延床面積
1,733.64㎡
建築主 有限会社 いろは堂
設計者 遠野未来建築事務所
施工者 株式会社フリーザーシステム
株式会社守谷商会
有限会社寺島工務店

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