伊勢市立 桜浜中学校

三重県伊勢市植山町461
 アースカラーを基調とし、屋根スラブやバルコニーにより水平性を強調した外観は、周囲に広がる田畑と共に大らかで伸びやかな風景を形成している。そうした長閑さとは裏腹に、甚大な被害が予想される南海トラフ巨大地震に備えて、津波の被害を最小限に抑えるために、滞在時間が短く一般利用も想定される特別教室や会議室などを1階に配置し、それ以外の諸室を2階以上に設けている。2階には災害時に市民が直接アプローチできるように、あちらこちらにポーチと外部階段が設けられ、さながら地上階と遜色ない開放性を持たせているが、管理上、生徒が勝手にテラスに出入りすることは許可されておらず、視覚的な連続性にとどまっているのが残念であった。各学年の教室は、ハイサイドライトにより明るく照らされた廊下を介して多目的教室と連続し、さらに明るく開放的なメディアギャラリーと接続することで、2階レベルで学年を超えた交流が生まれるよう配慮されている。
 防災の計画上、2階以上が活動の中心になるのは仕方がないにしても、1階のピロティの床仕上げやストリートファーニチャーを配することで、特徴を持った場を作り出し、2階のポーチと繋げていく工夫などがあれば、さらに魅力的な学校になったのであろう。 (横山 天心)
 伊勢湾にほど近い伊勢平野の農地の中、恵まれた敷地に建つこの学校は、市内の二つの中学校が統合して開校した新しい中学校である。その広々とした敷地を生かして昇降口、普通教室、職員室、屋内運動場などの主要諸室を2階に集約し、津波の最大浸水レベルをクリアするという提案である。3階には防災・多目的ホール、調理・被服実習室を備え、災害時には屋内運動場も含めて開放することで、地域の避難拠点としても利用可能としている。
 2階は、メディアギャラリーを中心に3学年の教室を1フロアーに纏めるという斬新な配置で、統合中学校として学年を超えた交流を促す、という提案だが、学年ごとに専用トイレ、オープンスペースを設けることによって学年ごとのまとまりにも配慮がなされている。また、教室は個室型だが、多目的教室とオープンスペースの活用によりフレキシブルに使えるという仕組みとなっている。
 中央のメディアギャラリーは、図書室やパソコン教室として配置されているが、大きな中庭に面して非常に明るくオープンなスペースとなっているおかげで、本や電子メディアに触れる場のみならず、生徒たちが自由に交流できる場となりそうだ。職員室にも隣接し、職員室前カウンターの設置も生徒とのコミュニケーションにも配慮がなされていると感じた。
 全体として、恵まれた敷地を生かした伸び伸びとした構成で、「素朴で美しい伝統的な姿『生なり』の精神」を体現している。校庭から見るそのプロポーションは、周辺の田園風景に調和してのびやかで美しい。 (松本 正博)
主要用途 中学校
構  造
鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造
階  数 地上3階
敷地面積
37,603.71㎡
建築面積
7,279.22㎡
延床面積
11,079.75㎡
建 築 主 伊勢市
設 計 者 日建設計・東伸周ARC設計特定設計業務共同企業体
施 工 者 (校舎棟)船谷・伊藤・富士特定建設工事共同企業体
(屋内運動場)吉川・宮本特定建設工事共同企業体

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