石川県立図書館石川県金沢市小立野2-43-1 |
何度も足を運びたくなる図書館である。「好奇心の海を泳ぎまわる」という市民の感想があったというが、まさにこの図書館を言い当てている。グレートホール(GH)と名付けた楕円状の4層の大空間に包み込まれている。天井高15m、長径56m、短径48mの大きな器の中に、好奇心を駆り立てるいっぱいの本たちが並べられ、そしてぎっしりと詰め込まれている。 この大空間GHは、方位ごとに加賀五彩の色彩で色分けされ、自分の位置と目的の本の場所がわかりやすいように工夫されている。 この大きな空間の中に、本を読み、本を調べ、学習できる小さな空間が用意されている。グループ活動室やものづくり体験スペースなど中くらいの空間から、個人が利用する多様な小さな空間がいくつも存在する。ブースで囲った個室スペース、外の景色を楽しめる半個室スペース、特別閲覧スペースなど、外周周りに数多く、空間をうまく取り込んで巧みに配置されている。これらはリラックスすることに適したものから、集中することに適したものまで、バリエーション豊かに設えられており、気分に合わせて選択することができる。 立地する場所は住宅地の中であることから、建物を敷地の中央に配し、その周りを駐車場とする配置計画となっている。建物を住宅地からできるだけ遠ざけ、地域への配慮が感じられる。また図書館への入口は5箇所設けられ、利用しやすく入りやすく配慮されている。 |
県立図書館の建て替えプロジェクトである。中心に円形劇場を思わせる吹き抜けのグレートホールと呼ばれる大閲覧空間がある地下1階地上4階建ての公共図書館である。 大閲覧空間は段違い状に閲覧スペースがあり1階から3階までスロープで結ばれ、段上書架を全てスロープで回遊でき、車椅子でもアプローチできるユニバーサルデザインを実現しているところが特徴である。エレベーター、エスカレーター、スロープ、階段による動線が交差し回遊性があり、動線に沿った書架や吹き抜けに面した席、窓際席、多種類な椅子・ソファなど多様な閲覧席によって集中とくつろぎ、探索をもたらしている。吹き抜け中央に架かるブリッジから見る大閲覧空間に配架された膨大な本に囲まれる様は圧巻である。 本図書館は閲覧エリア、こどもエリア、文化交流エリアで構成されており、モノづくりや食文化体験ができるスペースもあり官民協同のイベントも数多く開催され、人、モノ、情報の交流を促がしコミュニティの場や機会を提供している。ユニバーサルデザイン化、省エネルギー化、免震構造の採用、地元産材の利用や廃材の利活用等、持続可能な社会を実現する多様な手法がとられ、建築主の要望である課題解決型・探求型の地域コミュニティや伝統・文化とも連動した新しい図書館が適えられている。 建築家は遊環構造理論に基づき40年に亘り「遊環構造」の有効性を実証してきた。進化した遊環構造を最大限に適応した図書館である。 |
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(塩見 寛) | (筒井 裕子) | |||||||||||||||||||||
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