静岡理工科大学土木工学科棟 あーすつりー静岡県袋井市豊沢2200-2他75筆 |
一つの学科のための教室棟であることから、教育・研究の組織理念が的確に表現された優れた建築になっている。学部から大学院に至る教育課程に従って必要な空間が垂直方向に積まれており、低層部の二層には、規模の異なる教室が並び、それぞれ心地よい採光と眺望が与えられている。最上階の二層は教員室と院生室が充てられている。ここには、二層を繋ぐ大きな吹き抜けを内部にもつことによって、小規模な学科の一体感を醸成することが図られている。 建築的には、これらの五層の床と屋根が、3本のRCの壁柱で支えられている。その組み立ては菊竹清訓氏のスカイハウスを彷彿とさせ、将来の変化にも対応することが意図されたと推察できる。「大きな屋根」は、端部を薄くすることで、太く逞しいコア柱が与える重苦しさを弱めて造形的な緊張感を作り出している。あえて、あり得たかもしれない姿を想像すれば、二つのコアの隙間のガラス面がもう少し広場に対して語りかけても良かった。 (大野 秀敏) |
地域性が重視される時代において、地域で学び、地域に貢献するための教育は、地域資源のひとつと考えてもよいだろう。本作品は、静岡県内で初めて創設される土木分野専門学科の大学校舎として計画された。大きくはねだした水平庇などに、難易度の高い建築を精度の高い施工技術が支えていることが建築の姿として表れている。この点からも、中部圏域の地域社会の発展への貢献や、建築主、設計者、施工者を表彰の対象としている中部建築賞に相応しいと言える。キャンパスの最も高いレベルに位置し、建築学科棟と隣り合った配置は土木・建築の対比を、向かいに配置された実験棟によって軸線と広場との連続を、建築によって外部空間がデザインされている。2.7m グリッドのワッフルスラブを3つの RCコアが支える構成と、繊細な打ち放しコンクリートの表情は、土木スケールを建築的に洗練して建ち現れているようである。一方で、強大すぎるコンクリートヴォリュームには、学生が構造を生きた教材にできるという位置づけがなされているが、環境の時代の表現としては別のシナリオも考えられたかもしれない。また、土木学科の開学後2年といった状況で、本来の使い方がされていない建築を評価することの難しさを強く感じた。 (金子 尚志) | |||||||||||||||||||||
この建物は静岡工科大学に新たに設立された土木工学科のために新設されたものである。土木の特性を建物に表現するために、3つのRC造のコアで2.7mのワッフルスラブを支えるダイナミックな構成に加え、コアには敢えて開口部などを極力設けず、ヒューマンスケールを逸脱した橋脚のようにマッシッヴな建ち方をしており、隣接する建築学科棟と比較するとその特性がより明確に感じられる。一方で、ディテールや施工精度には建築的な配慮が徹底されており、張り出しの庇のシャープな納まりや打ち放しコンクリートの美しさなどにより、おおらかなスケールの外観に緊張感を与えているように感じた。 1階には作業室、アクティブラーニング、プレゼンテーションルームが視覚的にはワンルームのように感じられるように配され、さらに北側の折り戸を開放することでドライエリアと一体的に利用できるようになっている。また、3階と4階は、学生の研究スペースの中に教員室が入れ子状に内包されており、トップライトの光が降り注ぐ中央の吹き抜けラウンジが双方のフロア繋いでいるなど、一見閉鎖的に見える外観に対し、内部ではオープンで柔軟な使われ方が想定されており、今後の運用のされ方が楽しみである。 (横山 天心) |
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