第54回 中部建築賞 入選・入賞 作品選評

審査総評
 本年度の応募は一般部門A33点 Bが31点、住宅部門が30点で合計94点の応募を頂いた。昨年とほぼ同数であった。現地視察の件数は、概ね20プラスαを目標に投票と議論を経て選んだ。結果は部門Aから8作品、部門Bから7作品、住宅から8作品で合計23作品となった。ここで大凡4分の1に絞り込んだことになる。各作品に標準で2人の審査員を割り振り、運営委員の協力を得て10月と11月の2ヶ月をかけて実地で拝見した。ご協力いただいた建築の持ち主などの関係者の方々にこの場を借りて御礼を申し上げたい。
 全部の現地審査が終了したところで、名古屋に全員が集まって審査会を開催し各審査委員の評価を報告し、その後全員での討議を経て受賞作を決めた。昨年も書いたが、建築の流行は20年くらいの周期で変わってゆく。だれもが建築の価値観を形成した時期の流行というか建築界の関心の動向に強く影響を受けるので、同じ建物でも、審査委員の世代によってかなり評価が分かれることになる。現在の本賞の審査員は47才から73才まで26年に跨る。一方、建築は見ないとわからない。写真でみていいなと思って現地でがっかりすることがあるので現地審査をしている。そうなると、どうしても賞の行方は現地審査に当たった審査員次第になってしまう。これを避けるためには2名以上の審査が望ましい。
 偶然、一昨年からのコロナの影響で、審査委員会はオンライン開催が増えて事務経費が減ったので複数名の現地審査が可能となった。この体制は昨年から始まり2年目である。審査員の方々の負担は増えるが、現地審査後の議論が活発になり、より説得力のある審査ができたのではないかと感じている。 現地審査に付された23作品はいずれも力作であったが、多面的な視点から評価した結果、入賞8件、入選9件を選び、1作品を特別賞とした。また真摯な議論を経て5作品は残念ながら選外とした。
 総合的に見ると、リノベーションが健闘していた。星野神社覆殿・本殿は日本的な意味でのリノベーションでもあるが、こうした伝統技術と意匠が継承されることは有意義であり特別賞とした。一方、大規模オフィス開発が奮わないことも気になった。大きな建築は街並みに大きな影響を与え、街の品格を左右する。関係者はそのことを自覚していただきたい。
 筆者はなるべく多くの応募作品を現地で見ようと張り切ったが、それでも6件しか見られなかった。それゆえ具体名は出せないが、入賞作品のなかには水準の高い作品が多数あったことは心強い限りである。なお、昨年特別賞を贈った中部電力MIRAI TOWER(名古屋テレビ塔)が、今秋に国の重要文化財に指定された。改めて敬意を表したい。
(大野 秀敏)

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