Rural House三重県員弁郡 |
田園風景に現代建築はどのような姿を置くことができるか、本作品のタイトルにもあるルーラルという場所を主題にした平屋のコートハウス形式の建築がひとつの解を示している。 一見、穏やかに広がる周辺環境であるが、ほぼ建築の形状に近い南北に長い三角形の敷地に対して、東は道路、南西は隣地、西側は榎木の群生が残る市街化調整区域、そして北側は主屋との境界線となっており、法規制は厳しい。4つの中庭を交互に巡りながら北に向かって広がる空間は、地形の傾斜をそのままにしたことによって奥に行くほどに空間をわずかに上がりながら連続する。本作品の重要な空間となっている4つの中庭を中心に放射状に架構されている梁によって中庭の存在を常に意識することになる。各所に配置された窓は、この場所をよく知る設計者ならではの、田園風景の切り取り方であると感じた。また、緩やかに南に下がって傾斜している地形を残したことで、中庭と居室の関係がより鮮明に構築されている。 コートハウスの形式をとりながらも、外壁側に設えた乳白のガラス戸を開閉することによって、田園風景を思う存分に取り込むことが可能である。移動するシークエンスの楽しさをもつ一方で、窓の多い室内での居場所がやや落ち着かない印象であった。しかし、本作品の主題がルーラルにあり、ガラス戸を開いたときの中庭がもっとも心地のよい場所であることを目指したと考えれば、設計者の意図は高い質の空間となって実現していると言えるだろう。 (金子 尚志) |
おおらかな自然に囲まれた恵まれた環境にあって、住宅の敷地としては厳しい条件下である。この建物は、その変形した敷地形状そのままに、その高低差に沿って建っている。あるがままに、敷地条件を逆手にとった設計であると言える。 外部に開かれた中庭の形状が効果的で、どの部屋も明るくて風通しが良く、中庭や外部との一体感が感じられ、部屋と部屋の距離感も良い。昨今の高気密・高断熱の住まいが主流の中、空調に過度に頼ることなく過ごせそうなところも好感が持てる。敷地の高低差に沿って建っているので、部屋内にスロープが出来るが、廊下での処理などの工夫で特に違和感を感じることはない。生活していく上での収納スペースの少なさが少々気になったところではあるが…。 構造は在来工法の木造だが、構造体をそのまま顕した意匠が特徴的であり、顕すだけでなく中庭との一体感を出すための工夫も綿密に考えられている。外観的には敷地なりに平屋の建物が流れるように納まっていて美しい。ただ、その実現には、特殊な平面形状に起因する変形柱、梁勾配の処理、天井野地板の張り方など、施工者(大工)の技量に拠るところも大きいのではないか、と感じたところである。 (松本 正博) |
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南北に細長い直角三角形のような形状の計画敷地は、北側に施主の実家、西側に実家の所有する公園のような広い庭園、東側に道路が面しており、北側から南側に向かって緩やかな高低差がある。そうした敷地およびその周辺の状況を丁寧に読み込むことで、建物のボリュームは4つの中庭を取り囲むようにジグザグ状に配され、その屋根や床は地面をトレースするようにレベル差が設けられている。 中庭に面する外壁には連続して大きな窓が設けられ、さらに屋根の架構は中庭の中心から放射状に架けられることで、内部に居ると自ずと中庭に意識が向くように計画されている。 内部は極力間仕切り壁を設けず一つながりの空間を屈曲させることで場を作り出し、それらは必要に応じて建具で閉じて使用することもできる。中庭を介して内部の場が重層して見えることで、内外の境界が曖昧になり、各々の場のプライバシーも程よく守られているように感じられた。周辺環境に寄り添いながら、おおらかに営まれている田舎ならではの生活のシーンが、田舎らしい住まいに新たな魅力を与えている。 (横山 天心) |
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