星野神社 覆殿・本殿(愛知県豊川市指定文化財)愛知県豊川市平尾町上貝津102 |
棟札より1641年に建立されたこの豊川市の星野神社は、何時のころからか旧覆殿によって守られてきたが、今回、豊川市文化財の指定を受けて、本殿の部分改修とともに老朽化した覆殿が更新された。 わが国には伊勢神宮や、出雲大社を始め88,000の神社があるとされてるが、これはコンビニエンス・ストアーの実に1.5倍であり、いわば国土全体に伝統的木造建築の文化資産が残されていることを意味します。 我が国の木造建築は、三内丸山などの縄文遺跡や神社建築の「掘立柱+植物系の屋根」で構成される「掘立柱の系譜」と大陸から伝来した「礎石の上に柱を建て、瓦屋根」が葺かれる建築の系譜が存在する。 星野神社・本殿は現在においても軽量な杮葺きで屋根が維持されているが、柱脚は1尺ばかりの高さに設けられた礎石の上に柱が据えられている。 確証は無いが、この400年の間に、本来は掘立であった柱脚部の腐朽から、礎石方式に変更された可能性を感じさせる状態となっている。 今回建設された覆殿は現在の本殿同様、礎石の上に柱が建てられ、現在の建築基準法の限界耐力計算により解析されて、「適法建築」として建設された。 また、建物全体は、一切の金物を排し、雇い臍・込栓・鼻栓・貫・楔などを用いて構成し、木の特質のめり込みと、復元能力を活かした造りとなっており伝統的構法技術とコンピューターによる現代の構造解析技術の高い次元での融合は、今後、全国の社殿などにおける保存方式の有効な一つとして提示されたものと考え、その成果は高く評価できるものと考える。 そして、構造解析的には「別棟」としているが、床直下の柱を桁行方向で2列、梁間方向で4列を両側から梁で挟み足固めを行い、すでに老朽化している本殿の耐震性を高めている。 今回の評価において、優れた建築であることは疑いないが、いわゆるインテリアを伴わない建築として「特別賞」として顕彰することが相応しいと考えた。 (佐藤 義信) |
本殿を風雨から守るための覆殿であり、今回新しく建替えたものである。本殿は市指定文化財で、覆殿の建替えと同時に改修・復元を行っている。 新覆殿は、日本古来の継手・仕口によって金物に頼らず、金物を一切使用しない「伝統的構法」、敷石の上に建物を建てる「石場立て」、そして伝統構法の建築物の構造計算で有効と言われる「限界耐力計算」、この3つの方法により実施された。 技術の継承と森林事業を未来に伝えるため、使用するすべての木材は同じ地域の岡崎市内の山の木を伐採・製材し、1年以上の天然乾燥による材木としていること、伝統的構法で職人の手で刻み、組み上げていること、さらに一般公開を行い伝統技術と木の良さの可能性への啓蒙を行っていることが評価できる。 また、伝統技術・技法と木の特性の良さと資源の大切さを学ぶ場として、県内の大学生・高等技術専門校学生・若手大工・専門職種や県市の担当などの現場研修の場に使うことで、後進の育成や各職種の伝統技術の継承を行っている。伝統技術と建築物の持続を覆殿の建替えによって可能にしようとしている。 本殿を覆うための建物を増築(建築基準法上の扱い)するという単なる建築行為にとどまらず、伝統的構法・技術・技法で建替えることで、その技術・技法を学ぶ場にしていこうとする取り組みも、大切なことであるといえる。 (塩見 寛) |
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