笹島高架下オフィス愛知県名古屋市中村区下広井町1-14-8 |
高架下の空間は都市のヴォイドであると同時に、線状に駅へ接続する空間としての可能性を有している。しかし、鉄道への安全性、橋脚への構造的負担回避、土木スケールと建築スケールの折り合いなど、様々な課題あるのも事実である。本作品は、従来のように高架下に箱型空間を挿入する方法を越えた建築的な解法によって、高架下と呼ばれる場所が、土木と建築、都市と建築を横断し、人の流れを創造するような建築空間として新たな価値を見いだしている。 様々な与件をどのようにデザインへ昇華させることができるか、これは設計者への課題でもある。炭素繊維で補強された木材の利用も与件であったようだが、6mスパンの橋脚の間に梁幅120㎜の集成材を差し込むかのように、コンパクトで密度の高い空間が実現している。また、レベル差を設けたスペースの分割も、身体スケールとの調整に効果的な手法となっている。インテリアデザインは別途、設計・施工で実施されたようである。建築の設計者がどこまで関われるかは今後の課題であろう。 すべての新幹線は名古屋駅に停車するため、駅に近いこの場所では想像していたよりも新幹線による大きな振動・騒音は感じられなかった。ゆるやかに発着する新幹線とその下で働く人々の姿のスケール感とスピード感が空間活用にとどまらない高架下の可能性を感じた。 (金子 尚志) |
名古屋駅近くの笹島エリア、新幹線高架下に建つ木造オフィスである。例にもれず、空間的・構造的制約や振動・騒音などの問題のため、殆ど手つかずの土地・地域となっており、この計画は、それらの諸問題を乗り越え、法的な制約もクリアしながら、高架下の新たな活用方法の提案として捉えられる。 建築物は当然ながら、高架の躯体とは縁を切ることが求められながらも基礎は既存フーチングに乗る形となるので、新設建物は木造として建物重量の軽減及び基礎の簡素化を図っている。周辺は準防火地域であるが、告示(住防発14号)の活用で一部を耐火構造とすることによって、この規模での木造を実現している。 建物としては、土木インフラのスケール感・質感と、建築(特に木造)との違いをどうクリアするか? が一番気になるところだが、土木構造物をそのまま顕しながら、むしろ木造架構をオーバーラップさせて、お互いを“つかず離れずの関係性”を持たせて、違和感を全く感じさせない。“高架下”というと我々は少し“暗い”“汚い”という印象を持ちがちだが、そのイメージを一新する明るいスペース造りに成功している。使い勝手は兎も角、スキップフロアを効果的に配置しながらのそのスペース造りの手法は、建物の空間構成と外観の美しさに一役買っている。 (松本 正博) |
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この建物は東海道新幹線高架下に計画された木造オフィスで、木架構が高架のコンクリートの柱・梁を縫うように架け渡されている。2階部分が1階より2.6m道路側に張り出しているため長スパンのキャンティレバーは炭素繊維強化プラスチックを集成材に組み込んだ新建材「LIVELY WOOD」を用いているが、木造ならではの細やかな架構スパンが、スケールアウトした高架下の空間にヒューマンスケールの場を作り出している。 また建物の中央に防火区画帯を設けることで木造現しの内部空間を可能としており、極力露出させたコンクリートの躯体との混成が高架下らしい魅力的なインテリアとなっている。 屋根スラブと二階の床を上下階の用途に合わせて段状にレベル差を設けて配することで、一つながりの空間を分節しながら上下階の繋がりを持たせており、様々な場が程よい距離感で設けられている。 働く人たちは自分たちの仕事内容や気分に合わせて作業場所を選べるようになっており、リモート時代の新しいワークスタイルにふさわしい空間構成となっている。こうした施設が高架下に連続して計画されれば良いだろうなと思わせてくれる魅力的な建物である。 (横山 天心) |
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