リニモテラス公益施設

愛知県長久手市勝入塚205
 名古屋の東側に隣接する長久手市は、大学も多く、人口の半分が転入10年未満という我が国有数の「若い街」である一方で、「人と人のつながりが弱い町」との認識がおこり、2008年より「住民同士の交流の場」が構想され、2015年に施設コンセプト「新たなつながりをデザインする場」が策定された。
 一方、建設地は、リニモの長久手古戦場駅(日20,000人が利用)と大規模商業施設、バス停などに隣接し、目的施設としてはもちろん、通勤、通学、買い物行動と一体的に立ち寄り、各種市民主体の活動に参加することが期待され選定された。
 その後、2017年にプロポーザルにより設計者が選定され、基本設計①が策定されたが、その後、計画を抜本的に見直し、結果としてほぼ半分の規模に縮小され、改めて基本設計②が策定され、2021年建設された。
 結果として平屋建てとなった、この施設は36mの大廊下を中心に、各諸室に単独の屋根が与えられ、活動の多様性を表現するとともに、公益施設としての外観を特徴あるものとすることに成功し、同時に自由なアクセスと、外部からも室内での活動を伺い知ることが可能な構成となっている。
 一方、「大廊下」は特徴的なラチスフレームの連続空間に分節されたスケール感を与え、単なる導入空間にとどまらず、さまざまな活動を誘発する空間として市民の自発的活動を誘発する場となりうるとともに、外観的には独立性が高い諸室とはうらはらに、室内は引き込むことも可能なガラス建具でゆるく区切られ、一体的な利用や、活動室での動きを相互に感じられるものとすることに成功している。
 なお、この施設の運営に際しては指定管理者制度を導入し、休館は月曜日のみで、朝9時から夜の9時まで長時間の利用を可能としている。
 このハードと、ソフトな運営が一体となって、市民主体の各種活動が誘発されることを期待します。
(佐藤 義信)
 長久手市の玄関口ともいえる駅前に建つ公設民営の公益施設である。コンセプトは「新たなつながりをデザインする場」。長久手市が進める大学連携・観光交流・多文化共生・子育て支援等の活動で世代を超えて市民の新たなつながりを生み出し、市民が新たなチェレンジに取り組める場である。
 設計のプロセスにおいては設計者、コミュニティデザイナー、若手市職員、若手市民有志と協働して進め方を検討。基本設計時には新たなつながりについて考える場の市民ミーティング、市民がやってみたいことを自分たちの手で実践するイベントを開催。実施設計時にはより多くの市民とのつながるためイベントを開催、市民ヒアリングも行い設計案をまとめている。工事中も運営管理方法の検討、市民と多くの関わり求めてワークショップを開催。市民に対し実践して実感を得てつながりをつくるプロセスを踏んでいる。どこまでも市民とのつながりを重視したプロジェクトだ。
 外観は切妻の小屋が並び親しみやすい雰囲気で、隣接する公園や駅からの市民の導入を促している。内部は気軽に立ち寄れる場として長さ36.4mの大廊下と称する多目的に使用できる空間に様々な活動に使える小部屋が取り付く形で、大廊下は様々な活動が同時にでき、開口部は外部から中がよく見え関心を誘う仕掛けとなっている。特徴的なのは910モジュールの105角の国産桧製材を使ったラチスフレームで、外壁構面と910内側構面のダブルフレームが大空間を形成しており、市民が交流する場を豊かなものにしている。
 このプロジェクトの構想は2008年に掲げられ長い年月を経て実現した。この建物ができるプロセスも含めて評価するものである。
(筒井 裕子)
主要用途 事務所、一部飲食店
構  造
木造
階  数 地上1階
敷地面積
870.08㎡
建築面積
399.14㎡
延床面積
383.40㎡
建 築 主 長久手市
設 計 者 株式会社東畑建築事務所 名古屋オフィス 株式会社ナノメートルアーキテクチャー一級建築士事務所
施 工 者 株式会社服部工務店

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