あかばねこども園愛知県田原市赤羽根町天神21 |
本施設は愛知県の南、渥美半島の先端の街、田原市で3つの保育園を統合し、経験豊かな学校法人により運営される、教育と保育の機能を併せ持つ「幼保連携型認定こども園」であり生後10か月の乳児から6歳までの約220人を収容する比較的大きな児童施設である。 施設は大きく、子供が初めて出会う小さな「街」と位置付けられ、保育室は「家」、家が囲む「自然あふれる広場」、保護者や地域の人にとって身近に感じられる「地域施設」が有機的に関係づけられ、地域全体として「子育ての場」なることを目標に計画された。 施設は中央の広場を中心に一見、無造作とも思えるほど大胆に 敷地周辺に帯状に配置され、各「家」は半屋外の園庭側回廊で連続的に組織づけられ、お互いの息遣いを感じながら、最長6年に及ぶ幼児の成長の場となるよう計画されている。 また、外周道路の高さに合わせ、僅かずつ各「家」のレベルを分節し、同時に地域に開かれた各種のアトリエや子育て支援センターなどを「家」の間に挿入することにより全体として単調に陥ることを防いだものとなっている。 「家」は3,6m×5,4mを基本に9のユニットが連続しつつ、同時に使用目的に配慮した異なった天井高で計画され、全体として「一軒の家」としてさまざまな所作が誘発されるような空間構成となっている。 また内装は木を多用し、裸足で暮らす子供たちにとってストレスの無いものとしており、吸音性に配慮した天井の素材などと併せ、長時間にわたる幼児の生活が快適に過ごせる配慮が行き届いた環境となっている。 「街」の中核的空間である中庭は「街」全体で㎡30万円という限られた予算で最小限の投資しか許されないなか、高低差を活かした巧みなランドスケープがなされ、現在は直径10㎝程度の若木が点在する、寂しいものとなっているが将来、中央のムクノキなどが成長し、現在この「街」に通う幼児たちの子供の世代においては緑陰あふれる広場になるものと想像できる。 (佐藤 義信) |
周囲すべて公道で囲まれた敷地であることと、高低差4mほどの緩やかな地形であることを巧く活かした空間構成であることを、まず評価したい。 もうひとつ評価したいことは、こども園は小さな街であり、保育室は家であるという設計コンセプトに沿った空間と風景を創り出していることである。 こども園を街に見立てているということは、同時に地域の街の一部になるということである。敷地の形状を利用して、地域とのつながりを3つの円環として創出している。ほぼ三角形の敷地の頂点を、こども園が街をかたちづくる3つの道― 回廊、廊下、周囲の道、により地域とつながり重なる3つの広場を演出している。 また、公道と街としてのこども園の家により囲まれた中庭は、自ずと高低差が生まれ、この高低差はこどもたちが遊ぶ多様な場をつくり出し、こどもの活動に創造性豊かなプラスの影響を与えているといえる。 高低差のある造成に合わせ、様々な高さの家が建ち並び、軒先の微妙な変化とともに、リズム感のある風景をつくり出している。こどもの学びと支援のための場としての家には、家それぞれのアトリエが備えられ、長期間かけた創作や、多様な画材と素材を用いた創作など、こどもたちの伸び伸びとした活動の可能性を引き出すものである。 街の一部としてのこども園は、建設プロセスにおいて地域の自然素材をつかい、またこどもや地域との関わりをつくるため、果樹園の石垣をワークショップで作ったり、地域の人たちが立ち寄れる場所に東屋を設けたり、街の一部として愛着が感じられる場となるよう取り組みがなされた。こども園だけで終わるのではなく、街の一部となることを具現化したものといえる。 (塩見 寛) |
|||||||||||||||||||||
|
|