GOOD CYCLE BUILDING 001淺沼組名古屋支店改修PJ愛知県名古屋市中村区名駅南3-3-44 |
地球環境への負荷低減には、省エネルギーと適切な物質循環は基本である。近年、建築の省エネ化は大きく進展して、その手法やデザインも多様な展開を見せている。しかし、数値の達成に腐心して、本来達成すべき建築デザインと環境デザインの高度な統合を見せる建築が増えた訳ではないようにも感じる。本作品は、高水準で省エネルギーを達成しながらも、物質循環をコンセプトに多様な取り組みを実践したオフィスのリニューアルである。 本作品は資源循環のモデルとして、建築や家具、建設現場の残土に至るまで、使われる素材の循環のありようを丁寧に読み解き、建築に落とし込まれている。私たちが建築空間で目にして触れるのは、エネルギーの様子よりも素材感であり、人の身体感覚に直接、わかりやすく働きかけることからも素材は重要である。これまでの素材選定は、耐久性や素材感からの視点だったが、循環、アップサイクル、貯蔵と概念がわかりやすく提示されている。 約2.5mセットバックしてバルコニー空間が作られているが、竣工時からの経過による想定執務人員の増減を、どの様にリニューアル計画に落とし込むかは、建築計画としても重要な点であることを示している。 コンセプトを強く示すプロジェクトであるが故に、築30年のオフィスビルのリニューアルモデルとしてはやや要素の多さを感じたが、これからの都市資源、環境建築を考えていく上で物質循環が重要な視点となるのは間違いないだろう。 (金子 尚志) |
築30年の自社ビルの環境配慮型リニューアルプロジェクトとしての提案である。既存躯体・空間の有効活用、SDGsな管理をしている奈良吉野の森からの杉丸太の活用、建設残土・都市ゴミのアップサイクル、ユーザー参加のワークショップなど、新たな試行が盛りだくさんという印象だ。 既存の躯体については、前面カーテンウォールを撤去してのベランダ創出、窓の開閉方法の変更、スラブの除去、階段室・トップライト増設など、採光・通風を意識した空間改変が行われている。植栽帯の設置とも相まって、室内環境の改善には一役買っている。 メインファサードには、吉野杉の丸太が未乾燥のまま使用されている。意匠的には他で例を見ない斬新なイメージと感じたが、次回改修時には充分乾燥して家具などに活用できる、という提案である。アップサイクルについては、既存建物の建材、都市ゴミ、建設残土などを再資源化・再利用に意欲的に取り組み、内装材・家具などへと活用している。ユーザー参加のワークショップについても、自社ビルという事でスムーズに行われたようである。 (松本 正博) |
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外観は、既存のガラスカーテンウォールを取り除き、内外の境界面をセットバックさせて設けたテラス、その先端に配された土壁仕上げのプランターと緑、丸太の吉野杉の列柱により、都市の間に心地よいバッファーゾーンを作りながら有機的で周囲の景観に潤いを与えるファサードが実現されている。 建設会社の自社ビルの改修として、より良い循環を作り出すことを目的に、近隣の建設現場で発生した残土を内外の土壁の材料として、通常は処分されてしまう端材や木くずまでも家具の素材として再利用するなど、建築物をマテリアルフローの通過点「材料貯蔵庫」として捉え、循環の中の建築として徹底的にデザインされている点が非常に興味深い。 本プロジェクトは、こうした古い中小規模のオフィスビルをスクラップ・アンド・ビルドするのではなく、SDGsの観点からリニューアルしていく『GOOD CYCLE PROJECT』のフラッグシッププロジェクトとして位置づけられている。その本当の真価が問われるのは、本件で試みられた手法や理念が、今後続く第二、第三のプロジェクトに如何に引き継がれるかに拠っている。今後の進展に大いに期待したい。 (横山 天心) |
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