第53回 中部建築賞 入選・入賞 作品選評

審査総評
 本年度の中部建築賞への応募は、一般部門がAB合わせて60 点、住宅部門32点であった。一般部門が昨年から倍増、住宅部門 が半減と大きく動いたが総数は総計92点でほぼ変わらなかった。 審 査 は 、オ ン ラ イ ン 会 議 形 式 で 応 募 書 類 を 審 査 委 員 全 員 で 詳 細 に検討して現地審査に付する作品を24作品選んだ。ここで4分の 1に絞り込んだことになる。各作品に2人の審査員を割り振り、運 営 委 員 の 協 力 を 得 て 1 0 月 と 1 1 月 の 2ヶ 月 を か け て 実 地 で 拝 見 し た。全部の現地審査が終了したところで、名古屋に全員が集まって 審査会を開催し各審査委員の評価を報告し、その後全員での討議 を経て受賞作を決めた。
 建築の意匠の評価は本質的に主観性が強いものである。その意味では審査員を一人にすれば妥協も なくなり明確になっていいのだが、その審査員の見識に対する建築界からの信頼がなければ賞の権威 を失うことになる。そこで、複数の審査員会が組まれるのだが、現地審査に何名の審査員が参加できる か と い う 問 題 が あ る 。こ れ は 日 程 調 整 と 旅 費 の 問 題 で あ る 。昨 年 ま で は 現 地 審 査 は 一 人 で 行 わ れ て き た。実物を見た審査員の意見は、見ていない審査員の意見より重視されるのは自然である。すると一見 複数で審査している体制のようで、実は一人審査の足し算になりかねない。昨年はコロナ禍で現地審査 以外は全てオンラインで行われたので全員が名古屋に集まる旅費が節約できた。同時にオンラインでも 結構いけるという確信もえられた、そこで今年は現地審査に二人を派遣することにしていただいた。
愚見かもしれないが、建築の設計に関わって半世紀経って思うことは、建築の流行は凄まじいもので 20年も違えば建築設計者の価値観はガラッと変わることである。それゆえ世代間の相互理解はなかな か難しく、応募作品と現地審査員のあいだに価値観のレベルで不一致があると応募者は不運である。 二人審査とすることで幾分解決できることを期待している。
(大野 秀敏)

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