支えの家愛知県知多郡 |
知多半島内陸部丘陵地の周辺に畑が点在する既存集落の中に位置し、幅約7m東西方向の奥行40mほどの細長くいわゆるウナギの寝床状の敷地に建つ住宅である。敷地は東から西に向かい緩やかな登り勾配となっている。 施主の主な要望は高いセキュリティと4台分の駐車場、住宅の一部を地域に開放できるようにしておくこと、コンクリ-トと木の質感を持つことであるが、主階を2階にすることで1階を最小限にし、空きの空間をつくることで駐車場と地域への開放性を確保、またセキュリティも確保しそれに応えている。 1階は玄関、ゲストル-ムに最小限の機能を持たせ、2階に主たる部屋を配置している。2階はパブリック空間とプライベ-ト空間を明確に分けた横移動の平面計画で、開放的なリビングからは眺望が臨める。外観は周辺に従来型の切妻屋根の住宅が点在しており、景観的バランスから東西に長い切妻の屋根を採用しており、2mピッチの床梁がリズム感を生み出している。 大きな特徴は切妻屋根形状の躯体を折板構造の鉄筋コンクリ-ト造とし、そこから2階床を吊っているところである。切妻屋根形状の躯体の軒先に吊り柱を2mピッチに配置し、短手方向に5.46mスパンの2丁併せた梁で結び、2階床梁とし床を設置している。切妻屋根形状の躯体を支えるのはX・Y方向それぞれ2枚の厚さ30㎝のRC造耐力壁である。 施主の要望である地域に開放できる空間として、1階土間テラスとその奥の西側ピロティ部分の今後の活用が期待される。 |
住宅街に浮かんで建つ建築、長くはねだされた屋根スラブから吊り下げられた二階の床がつくるダイナミックなデザインが印象的。大胆な構造、素材の使い方、細部のディテールなど完成度の高い建築だ。 古い民家と新しい住宅が雑然と並ぶ中で毅然として立つ建築、住宅的なスケールではないところにこの建物の特徴がある。新旧が入り混じった雑然とした集落にどんな建築を作るかいつも悩まされるところだがこういう作り方もあるのかと感心させられた。存在感のある美しい建築が登場したことでこの街には何か活気が生まれたように思える。設計者は町にインパクトを与えることを意図してはいなかったかもしれないがこの建築がこの附近に与えた影響は大きそうだ。 主要な居室は2階に有り階段ゾーンを挟んで道路面に開けたリビングと寝室やダイニングのあるプライベートなゾーンに分かれたつくりとなっている。この二つのゾーンが分かれたことで筒状の空間に日常と非日常が区分され其れが住まい手の生活リズムが生まれ心地よいと評価されていた。 道路に面した二階のガラス面は屋根の妻面と角度が付けられシンメトリーが外されている。 写真で見たとき違和感を感じたが、実際の建物を見るとこういう表現になったのが理解できた。 斜めのガラス面は内部のリビングに変化を与え硬さを和らげる効果が出ている。 外観は住宅らしくないがそこがこの建築の特徴と言える。住宅として機能や快適さは確保しつつ建築としての表現をしたいという設計者の気持ちがわかる建築だ。附近でこの建物を見て依頼があったという。次はどんな建物が登場するのか興味深い。 |
|||||||||||||||||
(筒井 裕子) | (藤吉 洋司) | |||||||||||||||||
|
|