大泉寺の家愛知県春日井市 |
建築家でもあり居住者でもある応募者が、三世代(親夫婦と息子夫婦と子供)のために建てた木造二階建て住宅である。敷地は農地にも近く閑静な土地で、敷地も広くゆったりとしている。間取りは一階に老親、二階が若夫婦に当てられ、一階に暗めの土間が共通の玄関になっている。老親のゾーンは夫と妻にそれぞれ独立した部屋が当てられている。成熟した人間関係には、標準プランでは対応できない。それに比べると二階は比較的標準的で、nLDKの間取りで興味深い。 敷地には既存樹木が生い茂り山間のような雰囲気を感じるが、作者の空間演出が巧みだからこその成果であろう。ボリューム配置はL字型で、ケレン味のない外観を、たっぷりと出した薄い軒先で引き締めている。床はフローリング。天井壁とも漆喰壁が基調で、単純な形が内部空間が刳り抜かれ、普通の日本の住宅と比べると一つ一つは大きいものの、開口部の数を抑制することで暗めの室内に微妙な抑揚を作り出している。少しずつ小さめの寸法、見つけの細さなども手伝って優しさが生み出されている。 家具、置物、額など、いずれも厳選され配置もこれ以外ないと思わせる。全てのものが安定した一つの確固とした秩序の中にある。それは様式というような明示的なものではなく「好み」という方が適当かもしれない。数寄屋から吉村順三あたりを源流として多士才々の住宅作家のあいだを流れ一つの美しい流れとなっている。この流れは大きな海に注ぐのか、それともやがて地面に滲みこんでしまうのか興味深いところである。 |
ベッドタウン郊外に建つ若い建築家の自邸である。両親が暮らしていた実家を分離型の二世帯住宅に建て替えた。敷地西側にゴルフ練習場、南側にその駐車場、東側は道路を挟み一段高くなった小学校校庭という環境下であるが、迫るゴルフ練習場のそれを一切感じさせない。緑豊かな雑木林の中に住宅が見え隠れし、なぜか里山を彷彿とさせる感がある。 駐車場から続く曲線の石敷きのアプロ-チを進むとランダムな石敷きの目地は広めから徐々に狭くなり、土間では深目地に変化しながらそのまま通り抜け土間の玄関に入り込んでいく。その様は内から外に向かい真行草を感じさせる。薄暗い玄関から階段で2階子世帯フロアへ向かうと徐々に光が差し込み、視野が開ける。2階フロアからは小学校校庭の借景が見え、様々な開口部の配置が緑を楽しませてくれる。1階親世帯は高さを抑えダイニングを中心に低い間仕切りで程よい気配を感じられる空間構成となっている。住宅の空間、形態表現がますます画一化されていく中で、自然な佇まいで素朴感があり、家として普遍性を内在する。 外部空間である庭には、地域の人々と緩やかにつながる様々仕掛けがある。道路に面して設置されたRC造ベンチ、道路からの視線を程よく遮る低い柵やマウンド、庭中央のRC造テーブル等地域に開かれた庭を造っている。地域とのコミュニケ-ションの媒介空間として機能していくだろう。 このプロジェクトの肝は広い敷地に悩んだ建築家が造園家と意見を交わし、建築と造園計画を同時に進めたことにある。建築家が今回目指した“まちの気配を生活空間につなぎ、暮らしの気配をまちへつなぐ“を実現するために、どこまでも造園家に呼応することで、「気配を心地よくつなぐ」家を見事に適えた。 |
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(大野 秀敏) | (筒井 裕子) | |||||||||||||||||||
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