本町BASE

岐阜県関市本町6-4-1
 関市の目抜き通りである本町通に面した比較的広い市有地に、周辺に空地を残して街づくり施設が立つ。この事業の最大の特徴は発注形式にある。事業は有期で、採択者は建設から運営そして撤去まで含めた事業全体を請け負う。公募で選考された事業者は設計を本業とする応募者であった。包括的な委託ゆえに初期費用と運営表の配分も応募者の裁量になり、また期限が終了したら撤去しなければならないのでその費用も見込まなければならない。
 間取りは、細長く奥に深い敷地に合わせて矩形で、半分に小部屋が並び片側は通り土間で吹き抜けとなって2階分の天井高がある。土間は全面開放できる建具で仕切られて、屋外の広場に面している。季節がよければ一体的な使用も可能である。解体のしやすさと事業採算性を高めるためにローコストに向けてさまざまな構法的な工夫がなされ、よく考え抜かれ洗練されている。こうした関心の源流には、20世紀初頭のトロッケンバウ(乾式構法)の思想がある。まさにモダニズムの本流がここに流れている。
 現地審査の日がたまたま関市の刃物祭りの日にあたり、市民が次々と訪れて活況を呈していた。普段はキッチンを活用したさまざまな市民活動の拠点として活用されているという。
 現代日本では衰退する地域の再生に関わる事業は重要な建築テーマである。器である建物にもまして本質は運営にあることは言うまでもない。関市の今回の方式は、設計者は、建物の提案だけに終わらず運営にまで責任を負わなければならないとろが画期的である。設計事務所の業態を超えた事業に挑んだ応募者の勇気と前例にとらわれない市の施策に賛辞を送りたい。
 この建物は中心市街地活性化の為の拠点施設として、行政主催プロポーザル(設計.施工.保守管理.解体)による事業者選定を経て実現しており、設計者が事業主として計画されたものである。また、社会実験として4年後に事業評価を受け、評価が得られなかった場合には解体撤去が必要となるため、仮設性と恒久性が同時に求められる特異な事例であった。
 移設再利用が可能な建築デザインとするため、小径断面で極力短い部材構成となるように、柱梁を100角パイプによるピンジョイントのみで鉄骨フレームを構成し、それに水平力を担う木軸外装パネルをボルトで固定することで、仮設性と拡張性を担保している。鉄骨フレームは直接露出するため、その仕口にも直接ボルトやナットが極力見えてこないよう配慮されている。
 建物の構成は西側隣地側から、機能がコンパクトにまとめられた諸室が敷地の奥行き方向に沿って並べられ、それらを繋ぐように街のリビングスペースとしての「みんなのホール」「横丁ひろば」が配され、開口部を開け放つことで建物全体が半屋空間のように利用できるようになっている。
 現地審査当日はたまたま刃物まつりが開催されており、通りの賑わいをそのまま敷地奥まで取り込む設計者の意図が実態化されていた。
 新しい空間を生み出し、社会の中で実際に機能させるために、建築の「まえ」と「あと」も含めた全体を「建築デザイン」とする設計者の理念が具現化されたものであり、今後の展開を期待させる建築である。
(大野 秀敏) (横山 天心)
主要用途 シェアキッチン、チャレンジショップ
構  造
鉄骨造
構  造 地上2階
敷地面積
931.92㎡
建築面積
161.63㎡
延床面積
149.12㎡
建築主 岐阜県関市(にぎわい横丁整備に伴う仮設店舗等借上)
設計者 有限会社 大建met
施工者 株式会社 田口建設

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