四日市市総合体育館三重県四日市市日永東1-3-21 |
今年開催が予定されていた「三重とこわか国体」の競技会場の一翼を担うことをきっかけに、既存の陸上競技場や第二体育館を含め、5年の歳月をかけ段階的に整備された総合運動施設であり、広大な駐車場とともに三重県北部におけるスポーツの中心施設として活用されることが期待される。 総合体育館はアリーナレベルを基本に、主動線であるスポーツフォーラム、付属施設である多目的室、トレーニング室、そしてその外側に連続する屋外空間であるプロムナードまでが全て同一レベルに設けられ、身体的なハンディを抱える人も含む、あらゆる競技者・市民の活動を担保する構成となっている。 また、外観を特徴づける弓型で有蓋のプロムナードと一体的に設けられた広い多目的室は、南に展開する陸上競技場はじめ3つのフィールドでの活動における共通の控室としても利用可能な構成となっており、総合体育館が約30haにもおよぶ中央緑地全体の中核施設として機能するよう計画されている。 内部は比較的小さな断面の型鋼による架構で構成され、その内側に木製の格子を設けることにより、とかくハードになりがちなインテリアに優しさを付与し、同時に施設全体の統一感を醸成している。 一方、外装は構造体の外側にサブフレームを設けボリューム上の処理を行い、アリーナ全体を三次曲面による彫刻的なボリューム感のあるマッスとなるよう操作をし、外装材は全て0.4㎜と薄くエンボス加工を施したステンレス板で覆うことにより、現代的で敏感な表現に成功している。 今後は周辺の緑が育ち、環境的な円熟を期待するとともに、大規模駐車場が活かされた運営がなされることを期待する。 |
丁寧な調査、綿密な配置計画、建替え計画、緑地内他施設との連続性から生まれた全体のランドスケープをまず評価したい。全ての施設が関連性をもってそこに存する。そして、四日市市を連想する、という金属素材による“煌びやか”で強烈な外観、“柔らかな優しい表情”とは言い難いが、それなりの存在感を醸し出している。“一度見たら忘れられない”建物である。アリーナに隣接して設けられた多目的室も比較的低層に抑えられ、全体のスケール感としてバランス良く纏まっている。 平面計画は、他施設との連携を最大限生かせるよう考慮した造りであり、特に利用者に配慮したレイアウトであると感じた。エントランスに入ると、鉄骨トラスと木が複雑に絡み合う、自然光あふれる空間である。ウォーミングアップもここでできる様な広さを確保している。ただ、木の使い方は少々気になるところではあるが…。メインアリーナに隣接した多目的室も使い勝手が良さそうだ。何よりもメインアリーナを分割利用できる仕組み、隣接する会議室からの直接出入りが素晴らしいと感じた。屋根構造にも工夫が凝らされ、避難安全検証法適用などによるメリットも享受しつつ、高度な技術、緻密な計画に裏付けされた設計である。 |
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(佐藤 義信) | (松本 正博) | |||||||||||||||||||||
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