アネシス茶屋ヶ坂愛知県名古屋市千種区赤坂町1-29-2 |
建設会社が、木造とRCの混構造で自社の社員寮を建て直した中層集合住宅である。構造形式を反映して内外に木とコンクリート打ち放しがいい塩梅で取りあわせられている。坂下の交差点から見ると、妻壁の大きな木造壁面が印象的であり、内部では開口周りに一部の天井や耐震壁に集成材やCLTが用いられ現代的なインテリアとなっている。 一住戸の面積は70㎡程度で16戸。間取りは子育て世帯を想定しているという。可動間仕切りを積極的に活用して1LDKまたは2LDKと柔軟に対応できる。設備では、二住戸を一組にして、住戸間に階段と設備スペースを挟み込んで将来の更新をやりやすくしている。また、木造の内壁と躯体の間を換気に使うなどの工夫もある。共用施設としては一階にテレワーク作業室があり、これは災害時には事業継続の拠点になるという。地下には各戸一台の駐車場と広いドライエリアが設けられている。構造的な特徴は、RCの構造が主体で木造が一部の応力を負担するという役割分担であり、評者の理解では木造の出番をつくるために免震が用いられたという趣である。 以上ざっと見たように、この作品は、現代日本の建築の課題にくまなく応えるという誠実さが大きな特徴であり良さであろう。ただ、この誠実さが仇になって個々の課題に対する解決策としてみるとインパクトが弱い。建設会社の寮として、ある種のショールーム的な役割が課せられたため、致しかたないことがあるのかもしれないが惜しいと感じた。例えば、主題となっている木造でいえば、そもそも木造推進は脱炭素社会にむけた手段である。ここでの木造中層建築は挑戦としてみると中途半端感が拭えない。全体としての炭素収支は本当に合理的なのだろうか。また、地下鉄駅から至近距離にありながら立派な駐車場が備えられているのも脱炭素的ではない。企業姿勢を訴えるのであれば建物の作り方だけではなく使い方を含めた本気度が試されている。 |
緑豊かな茶屋ヶ坂公園の北西に位置する都心住宅街に建つ共同住宅である。大手建設会社が社宅の建て替え計画にあたり、子育て世代の若い家族の入居を前提に現代社会を取り巻く様々な問題に対する答えとして、都心のサステナブル集合住宅のマイルスト-ンとなるべく、中層共同住宅のモデルとして木質化を進めたプロジェクトである。 平面は2LDKの2住戸を1ユニットとして、2住戸間に設備関係を集約したメカニカルコアを挟む形態のスケルトンインフィルで、4ユニットが並ぶ片廊下式の地上4階地下1階である。地下1階には全住戸分の駐車場とBCP拠点施設としての防災備品倉庫、下部に被災時の汚水槽が設置され、車路下部には雨水貯留槽も設置され集中豪雨時に対応している。創エネ、省エネとして太陽光集熱パネルによるガス給湯器予熱利用、アースチュ-ブによる地中熱利用で空調電気量削減で再生可能エネルギ-を利用した環境負荷低減を行っている。 構造はRC造と木造のハイブリッドの免震構造で、耐震性、耐火性、遮音性、居住性に対応して、外壁・隣戸界壁・床はRC造で、柱・梁・間柱・CLT耐震壁等は接合部が鉄骨造の木質化構造部材を実証実験し、自社で開発し採用している。壁式RC造の壁以外をいかに木質化するかに取り組み開発した印象だ。柱、CLT耐震壁・合成床、軒天井、バルコニ-隔て板、化粧羽目板、外壁羽目板、ルーバ-等も積極的に木質化を行い、国産材を多用することで社会にも寄与している。 サステナブルにおいて現時点で考えられる限りのことを集約化した共同住宅とも言える。社会的使命ともいえる要請に応えたことを評価し、得られた知見を活かし更なる飛躍を期待するものである。 |
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(大野 秀敏) | (筒井 裕子) | |||||||||||||||||||||
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