長野県立美術館

長野県長野市箱清水1-4-4
 出かけて行くのが楽しくなる美術館である。そしてまた行きたくなる美術館である。
 何がそれほどまで惹きつけるのか。それは、地形を巧みに利用した空間構成、そして地域とつながる取り組みの空間化にあるのではないか。
 場所は善光寺の東に位置し、善光寺・城山公園・美術館エントランスとつながる大地の地盤をLevel1としている。美術館に入ると、エントランスホールは壁・柱が白、各階の天井が黒で塗装され、三層で構成されていることが体感できる空間となっている。北側に位置する東山魁夷館へとつながる地盤がLevel2である。東側道路につながる地盤がLevel3であり、Level1と10mの高低差がある。
 本館と東山魁夷館をつなぐ連絡ブリッジと交差する空間には、水辺テラス、カスケード、斜めの緑化壁が設けられ、10mの高低差を生かし開放された憩いの場所を提供している。さらにLevel3にある72m×25mの屋上広場は風テラスと名付けられ、善光寺本堂と背後の山並みが望まれ、信濃の風景を満喫することができる。全面ガラスと手を置く高さにカウンターが連続し、草屋根をイメージした緩やかな斜面状の緑化は遠景の山々とのつながりが感じられる。この風テラスに立つと実に気持ちが壮快になるのである。
 このような外に開かれた空間構成、周囲とつながる断面構成の妙が、この美術館の空間の価値を高めているといえる。
 地域とつながる美術館を実現させたもう一つが、県内各地で行われた県民とのワークショップによるものだった。作品の鑑賞だけでなく、自分たちが自由に多目的に利用できるスペースがほしいという声に応えるため、内外に一体的に利用できるアートスペースを提供した。これを屋根のある公園と名付け、公園の一部として日常的に利用できる場所となっていることは、設計のプロセスから生まれ、つながりを具現化したものとして評価したい。
 東側道路・彫刻広場とつながる地盤、東山魁夷館とつながる建築の地盤、善光寺・城山公園とつながる大地の地盤といった3つの地盤を巧みに操作しながら、ランドスケープと建築を一体的に計画することで、周辺環境と調和した「ランドスケープ・ミュージアム」となっている。特に、東側道路からのアプローチは、広々とした屋上デッキ広場「風テラス」にそのまま連続しており、善光寺に正対するように設けられた軸が建物のメイングリッドになっているため、自ずと善光寺への眺めを楽しめるようになっている。
 東側道路から10m下がった城山公園のレベルは、展示室の有料ゾーンと管理部門を取り囲むように、北側にエントランスホール、西側に「交流スペース」といった無料ゾーンが設けられ、それらは開放的な開口部により城山公園と視覚的に連続し、公園との親和性を高めている。
 本建物と東山魁夷館の間のスペースは、旧信濃美術館の跡地であり、東側道路と城山公園を繋ぐ外部階段に沿って、カスケードと水盤と植栽が組み合わされた水と緑のランドスケープは、両美術館の共用のアプローチ空間となっている。このスペースと建物の北側一部は、東山魁夷美術館のグリッドを延長させ、さらに東山魁夷美術館のエントランスレベルに揃えて2階レベルを設け、中空ブリッジによって両館を連絡している。
 また、立体的な水辺の空間には中谷芙二子氏による「霧の彫刻」が定期的に現れ、城山公園の新たな魅力スポットとして県民に親しまれている。また、断熱性能を向上させたオリジナルのカーテンウォールや、行政との交渉をしながら東側道路の歩道の仕上げや、城山公園のランドスケープなど、敷地を超えてデザインを展開するなど、設計者の配慮が隅々まで行き届いた隙のない建築である。
(塩見 寛) (横山 天心)
主要用途 美術館
構  造
鉄筋コンクリート+プレストレストコンクリート造、一部鉄骨造
構  造 地上3階、地下1階
敷地面積
16,363.30㎡
建築面積
5,857.48㎡
延床面積
13,256.96㎡
建築主 長野県
設計者 株式会社 プランツアソシエイツ
株式会社 オープンヴィジョン
施工者 清水・新津建設共同企業体
詳細は応募者のホームページを
ご覧ください。

一つ前へ戻る