志太広域事務組合 斎場会館 星山の苑

静岡県焼津市浜当目1159-1
  葬儀を行う場である斎場は、立地する地域にとっては日常から目にしたくない施設である一方、会葬する人々にとっては見られたくはないが最期の時を開放的に送ってあげたいという気持ちに沿った空間が求められる。このような言わば相反するテーマを空間化の一つの解として志太斎場会館は示したものといえる。
 1つは既存の地域軸とは異なる軸を設定した配置計画にある。東海道線と東南にある小高い星山に挟まれた場所は、鉄道線路に沿って道路や住宅が既に軸線を形成しているが、その軸線とは25度ほどずらして施設配置している。この微妙な“ずらし”は地域に直接対面するのではなく、かと言って閉じたものでもない、地域に視野を広く開いた空間となっている。
 また、横一直線に延びた屋根先は明快である。2階床レベルが奥行方向から真っ直ぐ延びてきて、その先端から1階天井へと緩やかに下がっていく空間は、屋根がわずかに上向きに開いたように感じさせ、暗さを払拭する明るさを来る人々に与え、大きな翼のように包み込み内部へと導いている。
 もう1つは、内部へと迎え入れられた建物の中央に配される帯状の光庭が明と暗を巧みにつないでいる空間演出である。エントランスホールと告別・収骨室を仕切る光庭の存在は、明から暗に向かう葬送シーンの切替えを演出している。さらに、複数に重なったガラススクリーンの反射や透過によって、会葬する人々からは周辺の風景が見通せると同時に、葬送の雰囲気が見通しにくい空間装置となっている。
 式場で骨葬を終えた後の「払い」(初七日)という儀礼は、星山の緑に包まれた階段を上がり、光庭の空中ブリッジを通って入る部屋で行われる。地域の風景を見渡せる気持ちの良い空間である。
 会葬する人々の様々な心情に寄り添い、葬送のシーンごとに演出された空間構成が秀逸である。
  まずは全体のボリュームを感じさせない、軒先のシャープな外観が印象的である。これは、バックヤード(炉室・機械室)と、収骨室、待合室などの配置の工夫、屋根形状の納まりなどによる見事な手法である。また外観だけでなく、裏山からの土砂災害への備えとしても機能しているとのことである。
 内部は連続する光庭によって“現世”と“来世”又は“プライベート”と“パブリック”を演出する、というユニークな試みとなっている。すなわち、葬送の一連の流れとして、エントランス(現世:パブリック)→告別収骨室(来世:プライベート)→待合ロビー(パブリック)→待合室(プライベート)、この動線を全て光庭を通して行うというものである。葬送のシークエンスに光庭による天候の移ろいを演出することによって、無味乾燥で閉鎖的になりがちなセレモニーを回避しようとする試みである。また、ガラス張りの告別収骨室というのは国内初らしいが、光庭が“光のカーテン”となり、会葬者からは周辺の風景が見通せるが、近隣や他の会葬者からは収骨室が見通しにくい仕組みとなっている。
 全体として、これだけのボリュームの施設にあっても隅々まで手を抜かない真摯な姿勢が感じられる設計、施工であり、土台となる技術力の高さが感じられる建物である。また、周辺施設との緩衝地帯を創出するための建て替え計画も綿密であり、外構工事も含めて秀逸な建物である。
(塩見 寛) (松本 正博)
主要用途 火葬場
構  造
鉄筋コンクリート造一部鉄骨造
構  造 地上2階、塔屋1階
敷地面積
16,700.44㎡
建築面積
3,079.91㎡
延床面積
4,722.35㎡
建築主 志太広域事務組合
設計者 株式会社 山下設計
施工者 橋本・近藤特定建設工事共同企業体
詳細は応募者のホームページを
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