下青島の家所在地 :静岡県藤枝市 |
ステンレス小波板に覆われ横連窓がぐるりと四周をめぐる。どちらかというとそっけない外観をもったこの住宅を初めて訪れる人は、いい意味で内部空間に裏切られる。コア部分は打放しコンクリート、周辺部分は製材による構造材と合板と白い家具で構成されている。空間の隅々まで明るさが満たしている。材料は薄く扱われて気安さがある。もちろん風呂もガラス張り、手すりも角材を流しただけ。家の中を空気が自在に流れている。法的には二階建てなのだが、床が細かく分割されて階の中間のレベルにも設定されているので、中央のコアの周りに様々なレベルの場所が取り巻くことになる。
RCの中央のコアもスケスケで、どこにいても、左右上下住宅内の場所と視線や音や匂いで結ばれている。巨大な遊具に暮らしている感じと言えばいいのだろうか。この空間を好み住み続ける家族は、間違いなく開放的でフラットな家族観を共有しているのだろう。ちなみに住み手は建築家自身である。 この住宅は、今日の若手の建築家が好む一つの建築の型を示している。先に挙げたいくつかの特徴に、アジアの小屋的な雰囲気、というとコロニアリズム的な偏見が混じるので、素人っぽさと言えばわかりやすいかもしれない。たとえば、材料の端部の処理をせず切り放しにするとか、凝った仕口をつかわないとか、工業製品と材木をぶっつけるとか従来の設計の玄人は決してしないことを敢えてする。do-it-yourselfの延長上にある建築と言えば良いのかもしれない。 矛盾をそのまま受け入れるとも言える。 たとえば、コンクリートコアの内部も小波板を型枠にして、外部と同じピッチの波溝のパターンになっている。設計者に伺えば外部として考えていた時期もあったという。内部にする判断は正しかったが、そのときの痕跡がこの仕上げである。内部にしたのだから波形もやめるという整理をしない。そういうラフさを持ちながらも窓には、複層ガラスが入り、波板はトタンではなくステンレスである。現代的な快適さや質が追求されている。そうなるとかなり際どいせめぎ合いを制しないと作品としての迫力が出てこない。アジアの小屋の追求は決して安易な道ではない。 |
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(大野 秀敏) | ||||||||||||||||||
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