伊賀上野の家所在地 :三重県伊賀市 |
まず城下町の街並みにこだわった点を評価したい。
失われつつある城下町の街並みを意識し、クライアントの生まれ育った伊賀上野の古い街並み、瓦屋根へのこだわり、上野らしさに対する強い思いが感じられる建築である。 周辺は、武家屋敷だった場所がミニ開発などで無造作に分割されて、街並みに関係なく道路側に駐車場を確保するためにセットバックした住宅等が建てられ、シンボルであった軒先の連続が失われつつある。そのような状況の中、“通りに面して土塀・門、瓦屋根の軒先をそろえる”という城下町の街並み・骨格を維持しつつ、現代的な職住一体の住まいのあり方をコンセプトとした建築である。そして素材についても周辺との調和を考えて、瓦屋根・杉板張り・桧格子などの自然材料にこだわっている。 配置計画としては、メイン道路に面して平屋のオフィスを緩衝材として配置し、住宅の入り口は脇道に面している。玄関ホールを介して住宅とオフィスは機能的につながりを持つ。住宅とオフィスは、二つの中庭を介して絶妙な距離感を保ち、それは住まいのプライバシーを確保するだけでなく、住宅の日照・風通しの確保にも一役かっている。 住宅の間取りそのものは特筆するものではないが、自然素材にとことんこだわった内装で纏められていて、それはオフィスにもそのままつながり一体感を感じるものである。 この建築が付近の景観を劇的に変えることは難しいが、周辺に与えるインパクトは大きいと感じる。ただ残念なのは、もう少し住宅部分を重点的にプレゼンテーションできれば“一段上の評価”となったのではないだろうか? |
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(松本 正博) | ||||||||||||||||||
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