寺部の家所在地 :愛知県西尾市 |
近年、ハウスメーカー的な気密性の高い、個室優先の家が多い中、この家はその対極的な家といえる。素朴で力強く、在来工法・真壁・日本瓦にこだわった家、農村風景・生活を望むクライアントの思いを実現した家、密閉された空間ではなく、外の風・自然が感じられる家、である。それでいて全く外部に開放的というのではなく、既存の防風林を利用して、適度に外部からのプライバシーにも配慮がなされている。
内部に対しても開放的である。家全体が一室、間仕切りなし、一つの空間として繋がっている。玄関も無くいきなり居間である。クライアントの生き方そのものと言ってしまえばそれまでだが、一切の無駄をはぎ取った“いさぎよい”家である。それでいて敷地の個体差を利用して、個室を半地下・中2階にするなどの工夫で、緩やかにプライバシーを確保している。実は、実際にこの家を訪れるまでは冷暖房効果はどうなのか?と心配していたが、クライアントの話では『夏は見てのとおり風通しがいいし、冬はこの薪ストーブのおかげで快適です』とのこと・・・。半地下空間として地中熱の温熱効果が功を奏しているようだ。水回り(浴室・洗面所)もオープンだが、むしろ風通しがよく、物干しとも直結で使い勝手がいい、と全く意に介さない。 周囲に、実のなる樹木を植え、季節によって異なる色を見せる植栽など、意識的に自給率を上げて家で過ごす時間を楽しむ生活を送るクライアント。そんな生活にフィットした家だと感じられた。 理解あるクライアントと優秀な設計者の出会い、それにこたえる施工者。クライアントの思いと、設計者の知識・努力が見事に実った住宅ではないだろうか。 |
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(松本 正博) | ||||||||||||||||||
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