コ・クリエイションセンター所在地 :滋賀県甲賀市甲南町柑子1063 |
まずは既存の工場棟の中にあって、この建物の特徴的な大屋根が存在感を放っている。特に玄関ポーチに対して大きく勾配を落とした屋根形状が特徴的であり、周囲の山並みとも調和がとれている。これだけで設計者の言う“社員エンゲージメントを高め創造的なカルチャーを生み出すしかけ”を感じられる。
クライアントは、グラビアインキをはじめとした工業用液体の開発・製造を手掛ける会社である。社員が豊かなきもちで創造的に活動し、社内外と垣根を越えて知の融合と新たな発想を得られる環境をめざして建てられた。内部は、全体的にオンとオフを曖昧にした、いわゆる“ファジーな空間”を意識したつくりとなっている。特にカフェ・フリーアドレスワークゾーンは、休憩、打合せ、カフェスペースとして多用途に利用されている。実際、家具の種類、配置等によって多様なスペースを創り出している。時には大人数の会議もここで開かれる、とのこと・・・。また、大屋根の空間をうまく活用した休憩室、パウダールームなどは、設計者の自由な発想がクライアントに通じたのか、と感じられる遊び感覚あふれる空間である。 一方来訪者に対しては“ファジーな空間”とは切り離して“クローズした空間”を配置し、自社の製品をアピールする“アート空間”として位置付けている。各部屋ごとに内装を変える(いずれも自社製品の内装材)などの工夫も凝らされている。また、玄関ロビー正面には建て替えられる前の旧事務所・厚生棟の写真が飾られていたが、何となくこの屋根のデザインを真似たのか、と思わせるものがあった。 最後に、この建物は設計者がクライアントの望むスペースを創り出した成功例の一つであると言えるのではないだろうか。 |
||||||||||||||||||||
(松本 正博) | ||||||||||||||||||||
|
|