豊田市役所藤岡支所・豊田市藤岡交流館所在地 :愛知県豊田市藤岡飯野町田中245 |
市庁舎支所と交流館の合築に、市民生活の重要なネットワークとしてのバスの待合所を加えた市民の拠り所としての建築である。まず、強い印象をうけるのが多数に分岐する木架構に支えられた大屋根の下の2つの吹き抜け空間である。一つはエントランスを入ってすぐの支所の待合コーナーで、2階へと導かれる階段が設けられている。もう一つは交流館の図書ゾーンの中心としてその周りの諸室の活動が吹き抜けを介して互いに見えるように計画されている。その樹木のような架構は国産材を用いたものであり、公共建築の木造化という持続可能社会を目指す現代テーマだけでなく、柔らかく新しいユニークな木造の可能性が示されている。
外構には東側の河原の並木とのつながりをもたらす配置計画や四季を通じて楽しめる藤岡らしさを持った植栽計画が盛り込まれ、交流館の調理室や工房や会議室との連動が図られており、2階の諸室からは全方位に遠景の山や森林を望む。人々のアクティビティや視線が建物全体、内外に拡がるように構成されているのである。 開館後、コロナ禍での利用制限もあり、まだ使い熟されていない感はあるがギャラリーには縁のあるアーティストの作品や市民の作品が展示され、支所のカウンターには活動団体のいろいろな情報が掲示され、徐々にみんなの土間(市民のリビングルーム)として親しみのある空間となりつつあるのが窺えた。更に期待するならば家具レイアウトの工夫によって、例えばバスを待つ高校生が勉強したり談話できるような居場所であったり、ちょっとしたカフェスペースがあれば日常的な市民のサードプレイスとして利用が高まるだろう。 個人的には、この建築が中部建築賞に匹敵するものだと考えている。最後まで議論があったが他の作品との選考の中で入選となったということを追記しておきたい。 |
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(加茂 紀和子) | ||||||||||||||||||||
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