能作 新社屋・新工場所在地 :富山県高岡市オフィスパーク8-1 |
鋳物製造を行う老舗の新社屋・工場に加え、ギャラリー、物販、飲食などを併設した複合建築である。鋳物工場が大きな空間ボリュームを占めるが、ランドスケープ・デザインを施した大らかな前庭を取り、建物の前面に高さを抑えた大屋根を配置することで背後にある工場のボリューム感を軽減している。このため、ファサードは上部の曲面を有する赤い外壁、大屋根により水平に広がる庇、庇下の連続するガラス面で構成され、伸びやかで魅力あるデザインとなっている。
大屋根の下の低層部はエントランス、ギャラリー、工房、ショップ、カフェがオープンに配置され、開放的で繋がりを感じる空間となっている。これらの一般利用の室内には、地場産の木材が天井、パーティション、家具などに使用されており、優しく温かい雰囲気を醸し出している。また、サイン、ドアノブ、ハンガー、食器および建材には、自社で製造した鋳物が使われており、建物の随所で鋳物の良さを感じる工夫が施されている。これらの木材と鋳物の質感は相反することなく、むしろ木質のベースに鋳物がアクセントとなって双方の良さが引き出されている。 工場は一般の見学に開放されており、鋳物製造の工程が直接見学できるよう余裕のある空間設計となっている。それに加え、自然採光や作業用のタスクライト、換気、廃熱などにも十分配慮がなされており、作業者にとっても合理的で快適な生産施設となっている。新社屋では、一般や商談の来館者が十数倍に増加するといった状況も生まれており、新しい鋳物製品の魅力とも相まって人々に愛され使われる建築となっている。 以上から、本作品は表彰対象として高く評価できる建築である。 |
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(川﨑 寧史) | ||||||||||||||||||||
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