ニフコ名古屋技術開発棟

所在地 :愛知県豊田市神池町2-1236
 世界中の様々な樹脂部品を生み出す企業の技術開発拠点整備計画である。従来は別棟であった生産系空間と執務空間を一体的に整備するという建築のプログラムであるが、「工場や実験室という生産系ボリュームを基壇として、上階に執務空間スペースを浮かべ、その間に生まれるクレパス状の隙間を創発性の高いコミュニケーションスペースとした」空間構成、合理的な動線計画、環境配慮の設備計画、自然エネルギー利用等、様々な技術を巧みに組み合わせ統合した秀作であることは応募図書からも判断できるところであった。中でも雲の流れを表すようなファサードの写真に惹かれたが、それは背後に工場・実験室や厨房からの設備配管を隠しつつ、建物の絶対的なボリュームを軽減し、光の加減で変化するという、多様さと軽やかさを備えたものである。
 執務スペースはスキップフロアやガラスのパーティションによって、緩やかに仕切られ繋がる広々とした一体的ワンフロア(約70m*60m)であり、その中央にはマグネットゾーンとなるオープンなカフェコーナーが配備され、執務スペースからコミュニケーションスペースに貫通するシマトネリコの巨木が収められた外気ボックスは、自然とそこにあるかのように太陽光や季節を内部空間に挿入する装置となっていた。また、コロナ禍のため、執務スペースは通常よりも疎なレイアウトとなっており、展示ルームや、本来は打ち合わせコーナーも執務スペースに転用されている状況であったが、破綻することなく、むしろ空間全体が活性化している様でもあり、プランニングの許容力を実証していた。
 コミュニケーションスペースの正面奥の壁面にある、若手設計者が苦労して作り上げたという自社製品(樹脂部品)を組み合わせた世界地図のアートワークが象徴するように、ものつくりの企業の理念と設計者の想いがインテグレートされた優れた建築として中部建築賞にふさわしいと考える。
(加茂 紀和子)
主要用途 実験室、工場、執務室、展示室
構  造
鉄骨造
階  数 地上5階、地下1階
敷地面積
30,623.82㎡
建築面積
4,925.16㎡
延床面積
16,412.77㎡
建築主 株式会社 ニフコ
設計者 株式会社 竹中工務店名古屋一級建築士事務所
施工者 株式会社 竹中工務店 名古屋支店

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