朝日村役場所在地 :長野県東筑摩郡朝日村大字古見1555−1 |
長野県の中央部に広がる松本平の南西端。西に北アルプスを控え、東に八ヶ岳連峰を望む標高700メートルの高原立地。高原野菜の畑が広がる人口4,500人ほどの村である。老朽化し、手狭になった役場の敷地を新たに求めて建て替えることとなった。 村の87パーセントが森林で、その60パーセントをカラマツが占めるという。村民の木への思い入れは強く、地元産のカラマツを積極的に活用する木造建築とすることが目指された。 エントランスホールに入ると樹齢240年とされる二本の桧の巨木が吹き抜けた空間にそそり立つ。交流ホールと名付けられ、木への愛着が感じられるシンボル的な空間となっている。このホールを基点として一方の翼には執務室をはじめとした管理諸室、また直行する翼には議場、会議室、店舗棟が並ぶT字型の平面構成である。一部に二階を有しながらも全体は平屋であるかのように大きな切妻屋根の構成でまとめられ、登り梁の架構で深い軒下空間を形成している。店舗棟との間に設けられた屋根付きの屋外空間は深い軒下空間と相まって、様々な活動を可能にし、来庁者の寄付き空間として機能している。木造ならではの美しいプロポーションの端正な外観は清々しい。 柱、梁、外壁パネル、床スラブなど構造材のほとんどにカラマツの集成材が用いられている他、開口部のサッシュもカラマツで製作するなど当初の意図が実現されている。村民の寄付による地場の古木(天然唐松、ケヤキ、栗、杉、赤松など)は内装や家具の材料として使われ、内部は木の温もりにあふれている。これらは室名札やサインなどにも活かされており、村と設計者の良好なコラボレーションが見えるようで微笑ましく感じられた。 地中熱利用による輻射熱冷暖房設備や太陽光発電による電力の軽減も図られており、その成果もかなりのもので経費節減に寄与しているとの説明を受けた。 気負わない中に村民の思いが託された庁舎は長く愛されるであろうと思われた。 |
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(尾崎 公俊) | ||||||||||||||||||||
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