常葉大学 静岡草薙キャンパス所在地 :静岡県静岡市駿河区弥生町6−1 |
JR東海道線・草薙駅の北側、東西に併走する国道1号線に南面して北に深く展開する視認性とアクセス利便性の高い工場跡地にこの新キャンパスは計画された。駅周辺、特に南側一帯は県立の美術館・図書館や大学等が立地する優れた文教地区であり、工場が建ち並ぶ駅北・国道沿いの文教環境の布石としての使命と期待も大きい。 キャンパス配置の骨格は、既存住宅地に接する東半に広いオープンスペースを確保して西半に建物群を集約し、東西に長い矩形中層棟を4枚並べて南北の校内動線軸で束ねる明快な形態である。国道アクセス側の最南がいわば本部棟で奥に続く3棟が一般校舎、断面的には3階までの低層部に中枢共用諸室と大教室が纏まる。 このキャンパス構成の最大の魅力は、東半のオープンスペースと建物低層部が櫛状に連綿と交錯する渚空間であり、外観的にも3階以上が統一されたアースカラー・縦繁デザインで颯爽と迫り出し、高質で軽快なリズム感を醸し出す。内外空間の心地よい融合の立役者は4階レベルまで小刻みに地表を誘導する「ステップテラス」で、2・3階では校内縦貫・交流の屋内大動脈空間「キャンパスリビング」と乗入れる。ステップテラスからは東方遥か富士山も見えるという。 総じて、随所のディテールや小コーナーの設え等にもきめ細やかな気遣いが感じ取れた。また他方、食堂や図書館を含め、学生たちが日常的に行き交うこの内外空間の多くが地域にも開放提供されるとのいい話を聞いた。 反面、地域に開く象徴として国道1号線の喧騒に無防備にフルオープンする結界ゲートは、視覚的・聴覚的にもう少し緩衝してもいい印象が残った。また、東半オープンスペースの柔らかな結界要素となる円弧上の桜並木や東縁の住宅地境の緩衝帯は、時を経てのより充実した緑のボリューム醸成に期待したい。 |
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(鈴木 利明) | ||||||||||||||||||||
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