旧名古屋銀行本店ビル所在地 :愛知県名古屋市中区錦2−20−25 |
名古屋中心市街地の目抜き通り・広小路通りの伏見界隈は、大正・昭和初期に近代建築の粋を集めた銀行ビル街であった面影が強く、本件ビルはその代表格たる格調高い銀行建築外観を今も残す。竣工は1926年、設計は東海建築界の巨匠・鈴木禎次であり、戦中・戦後に他の銀行名を次々冠した遍歴利用を経て近年はUFJ銀行貨幣資料館として再生されて街に賑わいを供し続け、名古屋市都市景観重要建築物(第1回)に指定されている。 本プロジェクトはリーマンショックの余波もあり保存活用か解体新築かの厳しい選択相剋の結果、隣接高層ビル計画と一体的開発手法(総合設計+連担、特に名古屋市初の歴史的建造物の空地認証)と歴史的建造物を活かす1棟貸しテナントパートナーの協働を得て、使われて愛される保存活用の「活用設計」のコンセプトで成立したと言う。外観を完全保存しながら内装は洒落た結婚式場に完全変身させる一大コンバージョンだが、その底流に原設計者・鈴木禎次とその原形への確たるリスペクトがあるのが嬉しく、まずその点を評価したい。 大規模な内部改修では、度重なる改修で閉塞していた玄関ホールの大吹抜けを竣工当時の空間性を継承して晴れやかに復活させたのが出色で、構造や設備面の現況・将来への総合的な安心安全・快適性付加の技術力や、旧金庫室回りの空間再編・古い調度等の継承置換など意匠熱意も小気味よく好感度である。結婚式場たる特性からの華やかな装飾付加との折合いを初め、保存改修の本体工事と活用最前線のテナント工事との複雑な調整難題も想像に難くなく、その達成自体も評価に値する。保存外観から解放された屋上の別世界・チャペルへの一新変貌は、隠れた自在性発露とも映った。 歴史的建造物の外観保存が大前提の事業主体と、その前提大歓迎でドラマティックな内部展開との相乗効果を求める特例テナントとのベストマッチで生まれた新名所・・今後の波及にも期待します。 |
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(鈴木 利明) | ||||||||||||||||||||
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