白山宮 足王社所在地 :愛知県日進市本郷町宮下519−1 |
名古屋市の東隣、日進市の田園に囲まれた小高い山の中腹に500年ほど前から続くとされる神社、白山宮がある。境内には古くから道祖神的に信仰されてきた「痛みとり石」があった。撫でると足腰の痛みが取れるとされ、街道を行き交う旅人が道中の安全を祈願したと言う。この境内に参道を整備しつつ、新たに足の神、アシナヅチを祀る社「足王社」を設けるというプロジェクトである。 麓の鳥居をくぐり、深い木立に覆われた石段をしばらく上ると本殿前の広場に出る。この脇に新たな社殿、「足王社」が築かれた。傾斜地故に参拝スペースは三段の人工地盤からなる。手前の二段は鉄骨造で軽快に支持されたウッドデッキでアプローチでもあり眺望を楽しむスペースでもある。奥の最上段がRC造でフラットな広場、社殿を置く参拝スペースである。屋根付の回廊が湾曲して楕円状のループを描き、結界を成して参拝空間を成立させている。ループの北端にアシナヅチの御神体、その裏に「痛みとり石」が祀られている。 ヒバの小径木の列柱(V字型の組柱)が屋根を支え、垂木がループに沿って高さを変えながらうねり、独特のフォルムを形作っている。北側の中央部では大きくむくって、御神体の在りかを示している。ご神体はV字型の列柱の中、手前に置かれた神鏡の奥にひっそりと納められ、見ることはできない。この御神体の裏側に「痛み取り石」が置かれ、回遊する参拝者が触れられるようになっている。小径木の建ち並ぶ回廊はさながら千本鳥居の中を歩くかのようである。 ループの回廊で回遊するという動きを導入しつつ結界を成し、参拝空間の正面性を少し緩和しつつ滞在場所を創り出しているところに好感が持てた。神社を訪れる人々の新たな居場所として親しまれることが予感される。 |
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(尾崎 公俊) | ||||||||||||||||||||
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