高岡信用金庫本店

所在地 :富山県高岡市守山町68
 高岡信用金庫本店の敷地は、平成12年に重要伝統的建造物群保存地区(以下伝建地区)に指定されている。高岡信用金庫本店はこの地に、1905年に建設された土蔵銀行建築様式の十二銀行高岡支店を、1944年に譲り受けるかたちで移転開業した。その後1962年に、インターナショナルスタイルの3階建ての外観の新本店を建設し、約50年間営業を続けていた。
 今回の新築は伝建地区の制限に合わせ、建築高さや屋根型など様々な制限のなかでの改築となった。この計画では二代前の土蔵銀行建築様式の復活が試みられている。当時の建築図面や資料、写真は乏しい。そこで、設計にあたり、明治末期から大正初期にだけ築造された他地域の土蔵銀行建築を含め調査研究を行い、この地域固有の土蔵建築様式の分析をおこなっている。
必要とされる容積も大幅に制限される為、伝建地区をはずれ容積の稼げる隣地に本部棟(事務所)と同じ伝建地区に入る別館(仮店舗・ギャラリー)を同時に計画し、休業することなく新本店を完成させている。その3棟の配置と接続は絶妙で、見事な成果をあげている。特に北西部に隣接するこの地出身の偉人・高峰譲吉の旧居跡の公園に対して、別館一階を高峰譲吉記念館として開放するなど地域貢献に充分配慮されている。
 外観の様式は古建築を模しているが、内部は明るい無柱の大空間を実現する為の構造、耐久性の高い黒漆喰の開発、高岡市の主要産業のひとつでもあるアルミの鋳物による観音開扉や格子など、いたるところに現代建築技術の粋が凝らされ、品格ある街並景観に寄与する美しい建築となっている。
 ユネスコ無形文化遺産に登録されている「高岡御車山祭」の御旅所にも使われた時の、この建築の写真を見ると、この無形の文化遺産の背景として、街並を構成する有形の建築文化遺産も、継承することの重要性を実感させる。
(栗生 明)
主要用途 本店、事務所
構  造
鉄筋コンクリート造、鉄骨造
階  数 地上2階
(事務棟は地上5階)
敷地面積
2,793.36u
建築面積
1,861.62u
延床面積
4,312.76u
建築主  高岡信用金庫
設計者  清水建設株式会社北陸支店
 一級建築士事務所
 清水建設株式会社 設計本部 
施工者  清水建設・松井建設・
 塩谷建設共同企業体

一つ前へ戻る