NICCA INNOVATION CENTER所在地 :福井県福井市文京4−23−1 |
400余名が働くオフィスといっても、企業の自社ビルであるので、社員が暮らす巨大な住宅としてとらえることも可能なのかもしれない。設計は自分たちの働き方改革というところからスタートしており、設計者はこの時点から関わっている。クライアントの期待に正しく応える建築をつくるためには、それが理想的なプロセスであるのは間違いない。そのことの必要性も重要性も承知しているものの、限られた時間とコストの中でそれを実施するのは容易くはない。クライアントというのは、企業の代表者のことではなくオフィスワーカー(女性たちの意見も重要)なのだということを認識することによって、このクォリティの高いワークスペースが誕生した背景が理解できる。 一般的なワークショップは現状の問題点などを挙げるにとどまってしまいがちなのかもしれないが、プロジェクトのコアとなる概念を見つけ出して共有することを目的として実施された。ここでは非常にうまく運んだのだろう。密度の高いコミュニケーションを経て、クライアントと設計者の間には絶対的な信頼関係がつくりあげられている。 仲間意識をもって楽しく働きたいという思いは、日々のコンディションによって自由なスタイルで仕事がしたいというところにたどり着いたのだと思う。彼らにとって重要だったのは、オフィスという名の自分の住宅における居心地の良さだったのではないだろうか。管理型のデスクレイアウトではなく、序列のないランドスケープ型のレイアウトをフリーアドレスで使い、ワンルーム的なアトリウムの中で人の動きを感じながら、自分の居場所を確保することができるという納得によって、かつてピラネージが描いた獄舎図を彷彿とさせるダイナミックなデザインを受け入れていったのだろうと思う。 働き方改革という目標は、極上のモダニズム建築空間として実現した。企業のみならず、地方都市にとっても誇りにつながる建築になっていると思う。 |
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(関 邦則) | ||||||||||||||||||||
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