愛知県立愛知総合工科高等学校所在地 :愛知県名古屋市千種区星が丘山手107 |
県内初の総合工科高等学校として、本科(3年制/1,200名)に専攻科(2年生/80名)を加えて新設された大規模な学校である。 明解な構成の中に、生徒一人一人の意欲が喚起されるような多様な学習・実習空間、出会いや繋がりが生まれる空間ができていると、一次審査でも高い評価であったのを現地審査で実感したのだった。 まずは、まちとの関係をつくる配置計画である。南側に校庭、北側に校舎という典型的な従来型の校舎配置を反転し、南側前面道路との敷地高低差を緩やかな緑化法面とし、イベントスペース分をセットバックしたところに生徒達の活動が見える東西140mの校舎のファサードが「ものづくりの学校」の存在をまちにアピールしている。 2点目は明確なゾーニングと縦横上下にスムーズに移動可能で回遊性のある動線計画である。屋上テラスのある3階フロア面をもう一つの地盤と位置づけ、階下(1、2階)は、様々な実習・実験室で充実し、3、4階は、学年学科毎にまとまりをもつ明るい学習・生活空間が内外に連続するように計画されている。そして、学科学年間の交流、接点をもたらすためのコネクトモールが挿入され、中庭・吹き抜け・ハイサイドライト等が通風や採光という機能に加えて、屋内外、上下に生徒達の活動場所、居場所を拡張している。 3点目は、この校舎そのものを教材とするべく、設計者の様々な創意工夫、技術者魂が発揮されていることである。例えばコストダウン策としての、建物外装から傘立まで同じ建材でできたディテールであったり、表面を化粧で覆わずに構造、工法、設備配管等をすべて「見える化」することを徹底していたり、随所に感心する楽しいポイントがあった。とはいえ、建物性能を保ちつつ、コストダウンを図り、美しく仕上げることは並大抵のことではない。それを実現した施工者側の気迫にも脱帽である。 ものづくりの実践を教え、未来の人材を育てる豊かな空間として賞賛されるべき建築である。 |
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(加茂 紀和子) | ||||||||||||||||||||
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