20.Shell House -森のことば-

Shell House -もりのことば-

所在地 :長野県北佐久郡
 木造に造詣が深く建築の趣向を理解するクライアントのための別荘住宅である。「非日常的で、美しく、時が経っても古さを感じさせない建築」というクライアントの言葉に、その資質が凝縮されている。軽井沢における風景条例の後退距離や建ぺい・容積率20%という厳しい敷地条件と相まって、設計者は森や大地と深く対話し、建築のあり方を模索した。
 その結果、「建築が周囲の森に溶け込む」、「アクセス道路とは逆側の水路や森、太陽の方向に大きな開口を設けて周辺環境と一体化する」、「地場の素材と人の手で造る」といった有機的建築を提案した。周囲の樹木を残し、枝葉にもできるだけ邪魔しないことを考え、結果として大きな木の実が大地に落ちたような造形となった。
 そのため、全体を木造シェルの架構としているが、ここでは直の柱に桁を回し、7本の太鼓梁とかぶら束で木造シェルの屋根を受けている。内部空間は吹き抜け2層となっており、1層部分は高上がりのスペースも設けられ、狭小さを感じさせない変化のある空間を実現している。また、内部はすべて木と土で仕上げられ、曲面の土壁が内部空間を優しく包み込んでいる。家具・内装も建築端材を積極的に用いるなど、その設計思想は徹底されている。南側に設けられた大きな開口は、緑と水と光を大きく取り入れ、環境と一体となる開放系の住空間を生み出している。
 歴史的に見ても、芸術・文化や技術の発展・継承は恵まれたクライアントの存在なくしては生まれないものであるが、この建築の有り方にはその一端が伺える気がする。さらに、これに応えた設計者と職人の意気とこだわりも伝わってくる。高価な素材を利用することとは真逆の、自然という贅をふんだんにつくした特別な建築である。
(川普@寧史)
主要用途 一戸建ての住宅(別荘)
構  造
木造 在来構法
階  数 地上2階
敷地面積
290.94u
建築面積
37.80u
延床面積
58.04u
設計者  遠野未来建築事務所
施工者  有限会社 寺島工務店

一つ前へ戻る