御園座タワー所在地 :愛知県名古屋市中区栄1−6−15 |
名古屋中心市街の2極を成す名駅と栄とを繋ぐ中間点・伏見地区は近年、古くからの由緒ある建物や街角の一画の再開発や再生に注目が急である。その中核部の広小路伏見の交差点界隈の街並みや視環境も劇的にスマート化更新され続けており、本件「タワー」たる超高層住棟のスリムで爽やかなランドマーク創出が更に新風を吹き込んでいる。次々と出現する超高層RC造の住棟ファサードはややもするとスケルトン露呈気味のマッチョ感を表出しがちだが、シャープな水平フィンを重ねた繊細な陰影を映し出す諸工夫が秀逸である。 街の賑わい動線を演出・鼓舞する中低層部構成「御園座再生」が本プロジェクトの最大命題であり、芸どころ名古屋の伝統的表徴たる御園座が新劇場として再生・お披露目された意義が何より大きい。旧御園座に比べて席数は減少し主アクセスは上階に移ったが、求心性のある馬蹄形の席配列や記憶を伝承する「朱・杢・なまこ」の主デザイン要素は高らかに踏襲されており、1階レベルを「街」に開放したことで遊歩空間や併設店舗・住棟アクセス等の複合的で賑わいある交流ステージを創出した。 足元に連なる公開空地の緑の集積とその享受の新光景が一際健やかに映る。バラエティーを競う中低木群を高尚に取りまとめるシラカシの株立ち大木の列植の佇まいが個人的には大好感である。他方、劇場ブロックの基壇部屋上に位置する、住棟導入ラウンジへの屋上庭園のセミプライベートな清々しい緑化も好適で、伏見通りの喧騒から隔絶された別天地環境を柔らかく演出している。 伏見通り沿いの基壇部に連続するなまこ壁の、繊細に再編された新デザインが清新な懐かしさでアピールし、夜間のシンプルなライトアップ効果も特筆される。その連続壁の南端にはぽっかりと、老舗劇場由来の朱色の大階段が誘引し、さらに南に先行竣工した某地銀の縦長菱目外装が覗く。当地区に吹く新風連鎖にも期待が高まる。 |
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(鈴木 利明) | ||||||||||||||||||||
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