19.森の段床

森の段床

所在地 :長野県上水内郡
 周囲は背の高い木々がそびえ、その間から野尻湖を望むことはできるが、感動的な絶景が眼前に広がっているというほどのスポットではない。言って見れば何らデザインの手掛かりになる特徴もない敷地で、設計者が着目したのは目の前にある木立だったということなのだろう。ただし、パノラマ状に木立を眺めたいというイマジネーションではなく、住人の上下の移動に伴う視線の縦方向のシークエンスによって木立の井戸の中にもぐるような立体感をしっかりと堪能しようということと、その高低差の中にグリッドフレームと床がつくる場と行為の関係を積層していこうということから、森の中に五つの小さな床を浮かべるというアイディアに行き着いたようである。周囲の木々や傾斜した土地形状と対峙するために自然の中に置かれた展望装置のようなイメージで、開放スタイルの狭小都市住宅といっても良いような印象でもある。
 最も低いレベルは、エントランスや浴室のある土間になるが、やや上がったところに半戸外のウッドデッキのレベルがあり、アウトドアの気分を楽しむことができる。土間から階段を上るとキッチンのある三段目のレベルに達する。この部分はタイル床で小さく、食事用テーブルの天板がそのまま次の床レベルになっていて、そこがこの別荘のメインの空間となっている。フローリング床の周囲をフルハイトのガラス面にして、木立の風景を横視線で見ることができる。クライアントはマイファミリーだけでなく、仲間にもこの別荘を使ってほしいと考えているらしく、このレベルはマルチに使われているようである。最も高いレベルは、小屋裏のロフトで、木立を見下ろすようになっている。
 上下移動の動線は外壁に沿ってスパイラル状に仕掛けられており、外と内のシークエンスを同時に感じとることができる。床レベルがずれた所は透明ガラスをはめ込んでいるのでレベル間での視線の貫入があり、段床ゆえの楽しい演出になっている。
(関  邦則)
主要用途 一戸建ての住宅
構  造
木造
階  数 地上1階
敷地面積
2,612.44u
建築面積
52.03u
延床面積
79.50u
設計者  SUGAWARADAISUKE
 建築事務所株式会社
施工者  株式会社 ミズケン

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